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Japan|Vstar Japan番匠達也代表が描くアフターコロナを見据えた中国戦略とは 

Jul 31, 2020.高村 学Tokyo, JP
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Vstar Japanの番匠達也代表(PHOTO:SEVENTIE TWO)

2020年6月の訪日外国人数が前年同月比99.9%減という数字に衝撃を受けた日本企業は多いだろう。コロナ禍でインバウンド需要は消滅し、これまで外国人客から恩恵を受けてきた企業は方針転換を迫られている。一方で、越境ECのニーズは今後さらに高まると見られている。経済産業省の試算では、2022年には日本から中国への越境ECの市場規模は2.5兆円に達するとしている。そうしたなか、今年7月に中国人向けマーケティング支援事業を展開するアライドアーキテクツがラオックスとの業務提携を発表した。ラオックスの主要株主で中国最大級の小売企業である蘇寧易購グループの中国における販売ネットワークを活用して、越境ECや商品輸出など中国市場を対象にした様々なソリューションを提供していくという。その陣頭指揮を執るのが、アライドアーキテクツのクロスボーダーカンパニー長の番匠達也氏だ。番匠氏は、2018年4月にアライドアーキテクツ傘下のVstar Japanの代表取締役にも就任し、中国向けのクリエイターマネージメント事業も展開している。アフターコロナを見据えた戦略をどのように描いているのか、番匠氏に話を聞いた。

SVT:Vstar Japanの強みについて教えてください。
番匠達也(以下、番匠):まず挙げられることは、中国SNSのプラットフォームとの連携によるタレント・クリエイターの育成です。他国と異なり中国ではSNSが独自に進化しています。中国SNSプラットフォームでは、プラットフォーム運営側がユーザーを活性化するイベントを企画しています。そのため、SNSで活動するKOLはその企画にあわせて活動していく必要があります。

Vstar JapanはWeiboのMCN(マルチチャンネルネットワーク)に選ばれています。そのため、Vstar Japanで支援しているタレント・クリエイターは、Weibo社で行われている企画にあわせて中国への発信を行うことができ、Weibo上での露出についてサポートいただけるようになっています。一方で、私たちはWeiboに限って展開しているわけではなく、中国のDouyin(TikTokの中国本家)、bilibili、Redといった、中国の主要なプラットフォームからも常に情報をキャッチアップしています。プラットフォームごとに欲しいコンテンツ、企画、形式が異なるので、例えばAさんという方がいれば、Weiboではこうした方がいいよね、Redではこうした方がいいよねと、プラットフォームに合わせたコンテンツを作っていけるところが私たちの強みだと思っています。

もう一つの強みは、営業活動やEC展開による収益獲得です。中国では再生回数に応じて得られる収益は少なく、それだけを頼りに活動することができません。フォロワーが100万人いて、コンテンツが1億回再生されたとしても、入っているお金はわずかです。YouTubeであれば再生回数に応じて収益がありますが、中国では収益を別の形で作っていかなければなりません。まずここを理解することが非常に重要ですね。私たちは、コマース上にショップを作り、ライブや物販で収益を得ています。そこに出演する日本人クリエイターを育成し、そしてどうすれば商品が売れるかまで支援します。また、企業タイアップ案件を活用できるように日中のクライアントへの営業を行います。

SVT:Vstar Japanが支援するYouTuber/ArtistのあさぎーにょさんがWeibo主催イベントで2年連続インフルエンサー部門賞を受賞されました。中国で評価された理由を教えてください。
番匠:中国のSNSの潮流に合致したことが大きかったと思います。各プラットフォームから、プロが撮影したような動画コンテンツを伸ばしていきたいという意向がありました。ひとつの動画が流れると、過去のアーカイブ動画も視聴されるので、それが蓄積されて一気に広まりました。プラットフォームからも、こういう音楽を流した方がいい、こういう枠に出した方がいい、といった助言があり、中国の潮流に合うように動画の質も高めていきました。あさぎーにょさんは今ではWeiboで103万人のフォロワーを持つインフルエンサーにまで成長しました。

SVT:中国にはMCNが2019年時点で2万社前後あると言われています。
番匠:そうです。中国ではYouTubeのような圧倒的なプラットフォームがあるわけではなく、非常にたくさんのプラットフォームが存在しています。MCNはプラットフォームごとに設定しているので、数が多くなるわけです。Vstar Japanは日本を拠点としており、中国からみると海外のMCNになります。中国のプラットフォームは日本人クリエイターの支援はしていませんが、Vstar Japanは日本人の支援に特化しています。そこにニーズがあるわけです。

SVT:今年に入り、新型コロナウィルスの感染拡大という想定外の出来事が起きました。いまの状況をどのように分析していますか?
番匠:アライドアーキテクツとVstar Japanの両社を私が見ているので、それぞれの視点から話していければと思います。Vstar Japanに関しては、日本人タレント、ユーチューバーの中国展開を支援していますが、主要顧客は中国企業やグローバル企業の中国支社です。中国では、消費も少しずつ回復していますし、Eコマースの売り上げも増えていますので、インバウンドの有る無しに関わらず、大きな影響はさほど受けていません。

アライドアーキテクツに関しては、日本企業との取引が多いのですが、新型コロナウィルスの影響は大きいとみています。これは私たちがというより、日本のブランドが非常に影響を受けているということです。インバウンドの最大の恩恵とは、世界中の人々にものを買ってもらえるオフラインの売り場を国内にもたらしたことです。メーカーは大きなプロモーションをかけなくても多くの外国人が訪れてくれ、大きな商売ができる場所が形成されたわけです。ところが、新型コロナウィルスによって、その最良の売り場を失い、収益の根源が消滅してしまいました。

一方で、中国ではその間に何が起きたかというと、中国ブランドを応援しようといった潮流ができました。具体的には化粧品メーカーをはじめ中国企業に投資が集まっているのです。投資が集まると、プロモーションをたくさん仕掛けていきます。中国側からすると日本に行く機会がなくなり、一方では中国ブランドの記事はたくさん見るようになりました。Z世代と言われる25才以下の若い世代は、生まれた時から中国は経済発展していました。「メイド・イン・ジャパンだから質が良い」という意識はどんどん薄れていて、自国商品、海外商品という点について特別視せず、「良い商品を購入したい」と考えています。インバウンドというオフラインの接点が一時的になくなってしまったことは、日本ブランドにとっては厳しい状況といえます。

SVT:インバウンド需要が消滅しました。日中間の渡航制限がいつ解除されるか見通せないなかで、ビジネスを発展させていく戦略があれば教えてください。
番匠:アライドアーキテクツとしては、どの世代に対して、どうメッセージを伝えていくのか、何を強みとしていくのか、そういったマーケティング支援を日本企業に対して強化していくつもりです。既に中国で販売を行っている企業としては、明確に世代を分ける必要があるのかなと思っています。日本商品について信頼している方が多い30才前後をターゲットにするのか、あるいはこれから消費の真ん中に立つZ世代を狙っていくのか、ここを明確に分ける必要があります。この両世代では、情報を取得する手段が全く異なっています。30才前後の方は、子供の頃から日本のアニメなどの文化や商品を体験している方が多く、向こう5年から10年は日本商品に対する安心・安全・質に対するイメージは変わらないとは思います。これから中国市場に展開していく企業は、在日中国人の方向けにプロモーションを実施していくことをお勧めします。既に在日中国人の方は日本国内に100万人おり、中国本土の消費者にとって日本に関する情報源になっています。まずは在日中国人の方との接点・ファンづくりを行い、中国SNS上での口コミを増やしていくことが有効と考えています。

SVT:7月にアライドアーキテクツがラオックスと業務提携しました。どのような戦略を描いていますか?
番匠:多くの日本企業は中国に販路を持っておらず、売り上げを長期的に獲得できる販路をしっかり作らないといけないと思っていました。今回の提携は、越境ECのニーズがどこまであるかを試すステップでもありますが、将来的には越境ECでの売り上げを構築していく長いロードマップだと考えています。ラオックスはTモールをはじめ、多くのモールに出店しています。失われた十年ではありませんが、失われたインバウンドの売り上げを、中国向けの越境ECで支援していきたいと思っています。

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