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LVMHはキム・ジョーンズをどうしたいのか?

Sep 20, 2020.橋本雅彦Tokyo, JP
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「ディオール(Dior)」のメンズ・アーティスティック・ディレクター(以下AD)のキム・ジョーンズ(Kim Jones)が「フェンディ(FENDI)」のオートクチュール、プレタポルテ、ファーコレクションを含むウィメンズのADに就任した。キムは2018年に「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)メンズのADから「ディオール」メンズのADに「栄転」したばかりだったが、「ディオール」のメンズADは兼務したまま「フェンディ」の仕事を続ける。今回の人事は、「フェンディ」のウィメンズADだったカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)が2019年2月19日に死去した後釜にキムが就いたということである。カールが死去後は、シルヴィア・フェンディ(Silvia Fendi)が全てのデザイン部門の責任者になっていた。キム加入後、シルヴィアはウィメンズのアクセサリー部門およびメンズのADを務める。シルヴィアはもともとメンズのデザインを得意にしているから、これは定位置だ。

カールの後釜のウィメンズADを探していたLVMHがなぜメンズ畑のキムに、「フェンディ」のウィメンズADという大役を任せたのか、腑に落ちない業界人も多いという。他にLVMHの息のかかったウィメンズ畑のデザイナーは、グループ内でもグループの外でもいそうなものだがと思う。しかも「フェンディ」というビッグブランドである。年1回とはいえ、オートクチュール(毛皮がかなりあるオートフリュールと言ってもいいものであるが)も披露しなくてはならないから、実は大変なポストなのである。しかも「ディオール」のメンズADとの兼務である。1年半も探し続けてキムだったのだから、オファーして断られたデザイナーがいたのではないだろうか。それにキムの経歴を眺めていると、ウィメンズの経験はほとんど見当たらずに、スポーツブランド(「アンブロ(umbro)」の仕事や「ナイキ(NIKE)」とのコラボ)や「ステューシー(STUSSY)」「シュプリーム(Supreme)」「フラグメント(fragment design)」「NIGO」などのストリートブランドとのコラボが異様に多いのに気付く。大丈夫なのだろうか?「フェンディ」にストリート感覚を持ち込んでくるのだろうか?当然それをLVMHは期待しているだろう。このキムに対するLVMHの信頼というのは、尋常一様のものでないのは、「ルイ・ヴィトン」のメンズADから「ディオール」のメンズADへの栄転や、「ディオール オム(Dior Homme)」の看板をなくしてメンズ、ウィメンズともに「ディオール」に一本化したことでも十分に分かる。才能は破格だが、今回の人事はキムにとっては大試金石なのである。ここで旋風を巻き起こして、「フェンディ」を大人気ブランドにするようなことがあれば、さらにLVMH内での栄転が待っているのではないだろうか。1979年生まれのキムは41歳。前途は洋々に見える。

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