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バルコスはなぜ東証プロマーケットに上場したのか?

Sep 5, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
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鳥取県倉吉市に本社をおくバルコスが東証プロマーケットに10月2日上場する。本社近くに自社工場を持っており、「メイド・イン・ジャパン」を売りにしたバッグメーカーである。「バルコス(BARCOS)」、「ハナアフ(Hanaa -fu)」などのブランドを擁している。東証プロマーケットとは、プロの投資家のみがその株式を購入することができる株式マーケットだ。危険も大きく消費保護の観点から一般投資家は市場に参入することができない。このため上場基準が緩やかで、上場コストも断然安い。例えば、マザーズや東証2部には上場まで最低でも3年はかかるし、最低でも上場には1億円程度の経費がかかる。また、その後も年間5000万円程度のコストがかかってくるがプロマーケットは格安だ。東証プロマーケット上場の最大のメリットは、なんといっても「東証上場」という看板を掲げることができることだろう。東証プロマーケットなんて言っても誰も実体は知らないから、「東証上場企業」となんでもかんでも露出すれば、信用度アップや知名度アップは計り知れないのである。資金調達だって、公募増資は難しいにしても、第三者割当てでできないことはない。バルコスの場合、資本構成は山本敬社長が80.7%、山本社長の資産管理会のグリーンが19.3%という完全ワンマンカンパニーであり、今回の上場に際して、山本社長が保有株を第三者に譲渡することも考えられる。

さて、肝心の業績だが、2020年12月期の見通しは、売上高が前期比44.3%増の44億円、営業利益は同51.9%増の4億7200万円、経常利益が同52.7%増の4億5100万円、当期純利益が同81.6%増の2億9100万円を見込んでいるという。このコロナ禍では、目を疑うような驚きの業績だが、鳥取県が行う新型コロナウイルス感染対策事業のマスク販売斡旋に協力したことやオンライン事業の強化やテレビショッピングなどが、リアル店舗の不振をカバーしたという。そういえば、最近山本社長がテレビショッピングに自ら出演して自社のハンドバッグを熱く解説するのを8月に偶然見たことがあるが、1回出演すると5000万〜1億円になることもあるというテレビショッピングで必死に業績の回復を目指していたのだろう。涙ぐましいばかりの奮闘ぶりだった。

それとこれも東証プロマーケット上場と関連していると思われるが、イッセイ ミヤケ社がバルコスを類似商品で訴えていた裁判についても、和解が成立している。これはイッセイ ミヤケが8月31日に発表したが、東京地裁が、バルコスの商品4種のうち3種についてイッセイ ミヤケの「バオ バオ イッセイ ミヤケ」に酷似した不正競争防止法に違反するとの判断したのをもとにして、両者内で和解協議を重ねた結果として、3種の商品とそれらの同一の形態の商品について、バルコスが製造・販売・輸出を中止する内容で和解したという内容だ。このイッセイ ミヤケの訴えは昨年6月13日に東京地裁に行われたものだが、当初バルコスは「全くの事実無根。バッグの形態が根本的に異なる」との見解を示し反論していたが、ここに来て10月2日の上場を前になんとか解決したいと態度を軟化させたようだ。とにかく、なんとしてでも東証プロマーケットに上場したいと必死なのが手に取るように伝わってくる。

上場しなければならない事情があるのだろう。たぶん第三者割当て増資、山本社長の株放出による資金調達が控えているのだろうと推測されるが、上場を焦っているようにしか見えない。相手にするのはプロの投資家である。無理な上場で足元を見られなければよいが。こういう企業が今後どんな歩みをするのか、大いに注視したいと思う。

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