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「アニュアンス」の初日売上高9200万円はどんだけ凄いのか!!

Jan 28, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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ファッション業界で現在話題沸騰なのが、D2Cブランド「アニュアンス(anuans)」がブランド立ち上がり初日に9200万円を売り上げて、これが日本記録ではないのかと言われていることだ。私の新人デザイナーへのアドバイスは、「とりあえず年商1億円を達成すること」だが、わずか1日で9200万円というのは凄まじい数字である。

どんな会社のブランドかというと、3ミニッツ社で「エイミーイストワール(eimyistoire)」を立ち上げた藤井亮輔氏が昨年8月に同ブランドをスピンアウトする形でドットワン社を設立。現在は「アニュアンス」「エイミーイストワール」「クレドナ(CREDONA)」の3つのブランドを手掛けている。その出身母体の3ミニッツという会社は国内最大級のインフルエンサーネットワークを持ち、動画マーケティング、インフルエンサーマーケティングをしていた企業で、アパレルブランド「エイミーイストワール」を保有していたが、43億円でゲーム業界大手のグリーに2017年2月に買収されていた。3ミニッツは赤字の会社だが、ゲーム事業が伸び悩んだグリーの次の一手ということなのだろう。しかしこれはいくらなんでも高い買い物だったのではないか。

そのグリーからスピンアウトしたドットワン社の藤井亮輔社長(32歳)はマークスタイラー出身(「エモダ」など担当)だという。グリーは動画マーケティングやインフルエンサーマーケティングに可能性を感じて3ミニッツを買収したのだろうから、アパレル事業への関心は薄く、藤井氏はアパレル事業を持ってスピンアウトしたものと見られる。

さて今回のニュースで最大のポイントは「アニュアンス」のクリエイティブディレクターの中村麻美(なかむらあさみ)氏だろう。彼女は1995年4月23日生まれの25歳。ミス青山学院大学のファイナリストで、その後丸紅に一般職として入社。退社後ジャパンイマジネーションに入社して2019年9月に立ち上げた「カシェック(CACHEC)」のブランドディレクターになった。しかしコロナ禍で2020年8月にブランド閉鎖。一世を風靡した「セシルマクビー(CECIL McBEE)」のブランド閉鎖でジャパンイマジネーションは危急存亡の瀬戸際状態が続いている。これに伴い中村氏も同社を退社。その後フォロワー20万人を持つインフルエンサーである中村氏は今回ドットワンから「アニュアンス」を立ち上げることになったというわけだ。
20万人のフォロワーがいるということは、その1%である2000人が「御祝儀」として5万円を購入すれば1億円になるわけで、日本記録などと騒がなくとも、まあ上出来のインフルエンサービジネスとしてなくはない。

しかし、リアル店舗で考えれば、1日9200万円という数字はちょっと限界ではないのだろうか。まずレジが20台は必要になりそう。かなり昔だが1日8時間レジを打って1台1日500万円(1時間60万円)が限界ということを聞いたこがあるが、だとしたらリアル店舗で9200万円をカバーするのだったら、19台のレジスターと19人のレジ担当が最低でも要ることになる。それ以外にも売り場に10人やそこらのスタッフが要るだろう。もうそれだけで気が遠くなりそうである。当然1日9200万円売るにはそれだけの広さも必要になる。最低でも200坪の広さは要るだろう。これも銀座や青山などだったらその家賃を考えただけで気が遠くなる。

要するに、ECだからこの初日9200万円は可能だったことが分かる。「H&M」銀座店の2008年9月13日のオープン初日でも、「ユニクロ(UNIQLO)」の巨大旗艦店舗のオープンでも初日1億円はたぶんないと思う。私が知る限りでは表参道の「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」の路面店オープン(2002年)が初日1億円を記録していた。また昔は、リアル店舗では、オープン初日の100倍がその店舗のオープン後1年間の年商と言われていた。そのセオリーからすれば初日9200万円の「アニュアンス」は初年度92億円というとんでもない数字になるが、そんな馬鹿なことはないだろう(笑)。ドットワンの売り上げ目標は初月で2億円、年間で15億円という控え目なものだ。もうECの時代だというのが、つくづく実感できる「アニュアンス」のデビューだった。

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