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「アットコスメ」を運営するアイスタイルが海外事業を拡大、その戦略とは?

Jun 25, 2019.高村 学Tokyo, JP
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グローバル事業開発本部のラファエル・ジュタン本部長

化粧品の口コミサイト「アットコスメ(@cosme)」を運営する株式会社アイスタイルが、海外事業を加速させている。中国を含め、現在8つの国・地域でビジネスを展開している。リアル店舗「@cosme store」を台湾、香港、タイに出店し、韓国では新羅免税店内に日本コスメゾーン@cosme J BEAUTY PARKをプロデュ―ス、中国では越境ECに加えて今年3月に一般貿易ECサイト「Tモール(天猫、Tmall)」に直営店@cosme 官方旗艦店をオープンした。2018年6月期で海外売上比率は26%(76億円)に達し、2016年8月に策定した中期経営計画「Road to 2020」で掲げた海外売上比率20%の目標を2年も前倒しで達成した。「ビューティ×ITで想起される、世界で1番の会社になる」ことをミッションに掲げる同社で、海外戦略の陣頭指揮を執るのがグローバル事業開発本部のラファエル・ジュタン本部長だ。「海外進出の基本方針は、日本でのビジネスモデルを持っていくことだ」と語るラファエル本部長に、海外事業の展開について話しを聞いた。

SVT:中期経営計画の目標を2年も前倒しで達成しました。主な要因を教えてください。

ラファエル・ジュタン本部長(以下、ラファエル):海外では「@cosme store」と「@cosme J BEAUTY PARK」を計12店舗運営しているほか、ECや卸売りなど幅広くビジネスを展開しておりますが、中でも中国でのビジネスの伸びが大きく貢献しました。長期的に見ても中国市場のポテンシャルは大きく、まだまだ伸ばしていけると考えています。中国では、「@cosme」の認知度もかなり高くなっている。また、認知だけではなく信頼もされている。それは、アイスタイルが掲げる「生活者中心の市場創造」というビジョンに忠実に地道なことをやり続けてきたからです。

SVT:中国への進出はいつ頃でしたでしょうか。

ラファエル:2012年に連結子会社のアイスタイルチャイナを設立しました。テレビ番組を制作・放送していた時代もありました。成長の契機となったのは、2015年に中国向け越境ECサイト「Tモール国際(天猫国際、Tmall Global)」内に直営店「@cosme 官方海外旗艦店」を出店したことです。2019年には一般貿易ECサイトの「Tモール」にも出店しました。「Tモール」の2つのサイトや卸売りなどを通して中国のユーザーと日本の化粧品ブランドの出会いの機会を創出してきましたが、日本のブランドにとって安定的なプラットフォームであり、中国市場におけるパートナーになることで中国市場における売上が業績にさらに寄与するだろうとみています。

SVT:矢継ぎ早に海外での展開を打ち出しています。

ラファエル:この夏にマレーシアと香港にて@cosmeのグローバルアプリのローンチを予定しています。「@cosme」の基本である化粧品の商品情報、口コミが、国・言語が切り替わって展開されるイメージです。まさに国境を横断していくようなサービスです。ゆくゆくは、世界中のユーザーがひとつのIDでいつでもどこでも自分の言語で「@cosme」を使うことができる世界を目指しています。今回のローンチは、まさにその実現への第一歩です。それから、当社は口コミのモニタリングは徹底していますし、ランキングはサポート体制のある国でしか展開しません。ユーザーを裏切ることはしないと宣言もしています。

SVT:2018年には「@cosme J BEAUTY PARK」を韓国に出店しました。

ラファエル:まず、誤解のないように伝えておきたいのは、海外に“日本の化粧品を広げること”が事業目的ではないということです。アイスタイルが目指しているのは、各国でのユーザーの声を拾い、日本同様に、グローバルな化粧品市場においても、生活者とメーカー・流通のミスコミュニケーションを解消し、生活者中心の市場を作るということです。もちろん機会があれば出店もしていきます。実際、5月に2店舗目となる当社がプロデュースした日本コスメゾーンを韓国の新羅免税店内にオープンしました。

SVT:J-beautyはどのように定義、あるいはイメージされていますか?

ラファエル:J-beautyは、再発見されたものだと思っています。実は、J-beautyは80年代からメイクアップ・アーティストなどプロフェッショナルな方たちからはすごく注目されていました。それがメインストリームのトレンドにはならなかっただけです。ここ数年でJ-beautyが注目されるようになったのは、K-beautyが先行して世界的に話題になっていたからだと思います。K-beautyは、ミレニアル世代が好きそうなポイントをうまく取り入れて、K-POPやインフルエンサーと一緒に世界へ広げていきました。今の時代だからやれたことで、面白いと思います。その対極として、品質の高い商品を日本らしい独自のセンスで作っているのがJ-beautyではないかと考えています。

SVT:では、日本企業がグローバル企業になるために必要なことはなんでしょうか。

ラファエル:かつての「メーカー」の時代であれば、良いものを作ればグローバル企業になれました。トヨタもそうですし、ソニーもそうです。「メイド・イン・ジャパン」には価値がありました。そして、日本のお客さまは機能や品質に対して良い意味で厳しい。そこで鍛えられ育てられたから、海外に出ることができました。ただ、ウェブやアプリではそうはいきません。海外で認められるためには、世界で通じるUI(ユーザーインターフェイス)とUX(ユーザーエクスペリエンス)を作り、世界で通じるサービスを作ることが非常に重要です。当社のビジョンやミッションを毎日のように振り返り、本当に世界に通用するのかと考えています。今やっていることが本当に合っているかと考え続けています。原点に戻って考えることの大切さは、当社の吉松徹郎・社長も社員全員の前でいつも必ず話すことです。グローバル企業へと成長していくには困難や苦労も多いですが、この仕事にとてもやりがいを感じています。私は日本が好きですし、アイスタイルのビジョンにも賛同しています。いろいろな国に行き、いろいろな方に会い、アイスタイルのビジョンを海外に広めていくというこの仕事はとてもやりがいがあります。

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