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あなたの会社の損益分岐点は何%ですか?

Jan 21, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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2回目の緊急事態宣言が1月8日に発出されて、まず飲食店(特に居酒屋)の危機が叫ばれている。1月20日にNHK『クローズアップ現代』の「居酒屋がなくなる!?/岐路に立つ居酒屋」を見ていると、大手でも多角化していないチェーンは苦境に立たされている。いわんや中小居酒屋はもう瀬戸際である。ファッション&アパレル業界もバーゲン時期がモロに直撃されて、予定していた在庫の現金化が半ば絶望的になっている。「もう赤字でも出血でも売れるだけ売って現金を作れ!」というトップの悲鳴にも似た号令が聞こえて来そうである。そうした「生き地獄」をよそに東京でもNYでも株価だけは上がっていくのだから、一体どうなっているのだ。全くもって不気味である。

閑話休題。1月19日の繊研新聞に「フランスモード研究所(IFM)が2020年のテキスタイル製品とファッションの国内消費は前年比17%減との予測」という記事(松井孝予通信員)が載っていた。また同新聞の同日の記事で日本繊維輸入組合が財務省貿易統計を基にまとめた衣類輸入状況(速報値)によると、2020年1月〜11月の日本における輸入量は前年同月比13%減で86万1069トン、金額ベースでは16.5%減の2兆3966億1500万円だったという。2020年のコロナ禍で、フランスも日本も大体金額で16〜17%ぐらいの減少になっているようである。実店舗ベースでは「肌感」で30%減ぐらいだがECもあるから16、17%ぐらいの減少で収まっているようだ。これも「肌感」で恐縮だが、日本のアパレルの小売店の損益分岐点は前年比で95%(5%減)という水準だと感じている。つまり前年比5%以上へこむと赤字になるということだ。これはEC込みで、フランスモード研究所や日本繊維輸入組合の数字を信じれば、前年比16〜17%減ということは、前年比で11〜12%の売り上げが足りないということになり、経費が同じならばその分まるまる赤字になっているということであり、これは笑えない数字である。

前年比95%が損益分岐点というのがそもそも高過ぎるのだろう。経費(その大半は人件費と家賃)が高過ぎるのだ。前年比85%の損益分岐点にならないと安心できないということをこの際、肝に命じるべきなのだろう。企業体質の強化とはこの損益分岐点を低下させることがまず第1のポイントなのだ。これもオイルショック(1973年)、バブル崩壊(1990年)、リーマン・ショック(2008年)と大きな経済危機で消費が大減速するたびに言われて来たことだが、たぶん有言はするが、実行して来なかった企業が多かったはずだ。そして実行しなかった少なくない企業が消えて行っているはずである。

津波にやられた福島第一原発の防波堤の高さのことを思い出す。「あと数十メートル高くすれば万全だが、まあそんなことは考えられないから、これぐらいの高さで十分だろう」という甘い考えが大惨事につながったのである。経営者にはそうした石橋を叩いても渡らないという慎重さが求められる時もある。

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