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「アレキサンダー・マックイーン」を退社したサラ・バートンは今後どうなるのか?

Sep 20, 2023.三浦彰Tokyo,jp
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アレキサンダー・マックイーン公式インスタグラムから 2023AW着用モデル

「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」のクリエイティブ・ディレクターのサラ・バートン(Sarah Burton 1974年生まれ)が9月30日の2024年春夏コレクションのパリコレでの発表を最後に退任する。ブランドの新体制については、後日発表すると同ブランドを傘下におくケリングが9月11日に発表した。

このニュースには、「え、そんなことあるの?」と驚かされた。なにしろサラはセントラル・セント・マーチンズを卒業後、1996年にアレキサンダー・マックイーン社に入社し、2000年にはウィメンズウェア部門のチーフに就任し、マックイーンが自死(2010年2月11日)した2010年の5月からは13年以上にわたって同ブランドのクリエイティブ・ディレクターとして同ブランドの全てのコレクションを統括してきた人物だ。マックイーンのような破天荒な天才デザイナーの下でまさにその右腕として14年間仕え、そしてその死後13年間、その天才デザイナーのビジネスを継承し、発展させて来た。マックイーンをファーストネームの「リー」と呼び、親友であり、天才だと尊敬していたサラは、マックイーンが自死した時には、ブランドが無くなると思ったという。しかし、親会社のケリングと話し合いマックイーンの築き上げて来たクラフトマンシップを始めとしたブランドの遺産を引き継ぐことを決意している。

デザイナーブランドは、そのデザイナーの死を契機にその遺産(DNA)を受け継ぐことによって、デザイナーの創造力や閃きに頼ることのないラグジュアリーブランドに変身してビジネスが巨大化するというのが私のラグジュアリーブランド誕生論だが、まさにマックイーンからサラ・バートンへのバトンタッチによって、アレキサンダー・マックイーンという天才のデザイナーブランドから、サラによって着々と「アレキサンダー・マックイーン」に転換していった。例えば、ハイランド・レイプ(1995年のコレクションテーマ)に代表される「強い女性」のイメージをベースにして、サラは職人的素養によってそこにより繊細でロマンティックな要素を加えていった。最近はビジネス的にも拡大路線に入っており、サラの評価が高まっていた矢先の今回の退任だった。

2010年の就任時全く無名だったサラが一躍有名になったのは、2011年に行われたウィリアム王子の結婚式でキャサリン王妃が着用したウェディングドレスをサラがデザインしたためだ。実に繊細なディテールが見事な仕事で、サラの職人気質が感じ取れる一方で、分量の大胆さなどにはマックイーンの後継者らしさが垣間見られた。これを契機にサラは、2011年にブリティッシュ・デザイナー・オブ・ザ・イヤーを獲得、2012年にアメリカ・タイム誌の「世界で最も影響のある100人」に選出、2019年はブリティッシュ・ファッション・アワードのトレイルブレイザー(先駆者)賞が贈られている。

名実ともにファッション界の実力者として認められたサラだが、2016年にはラフ・シモンズ(Raf Simons)が辞任した後の「ディオール(DIOR)」ウィメンズのアーティスティック・ディレクターの候補者に名前が挙がっていたと言われる。結局は現在のマリア・グラツィア・キウリ(MariaGrazia Chiuri)に決まったのだが、いつの間にかサラはビッグ・ラグジュアリーブランドが注目するデザイナーになっていたのだ。

今回のサラの退任に関して、サラ本人は発言していないようだが、49歳のサラはまさにデザイナーとしてのピークを迎えようとしている。どこかのブランドからの引き抜きがあったのか、あるいは自らのブランドをスタートさせようということなのか、動機は定かでない。

一体「アレキサンダー・マックイーン」でサラの後を継ぐのは誰なのか?そして同時にサラの今後はどうなるのか?大注目である。

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