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『コレット・モン・アムール』なんて映画がなんで今ごろ作られたのか?

Sep 26, 2020.橋本雅彦Tokyo, JP
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『コレット・モン・アムール(原題:COLETTE, MON AMOUR)』というドキュメンタリー映画(60分)が9月26日から渋谷パルコ8階「ホワイトシネクイント」で上映されている。単館上映で期間は10月8日までの2週間ほど。さっさと見に行かないと終わってしまう。もう「コレット(COLETTE)」と言っても、若いファッション・フリークはわからないだろう。1997年にパリのサントノーレ通りにオープンしたセレクトショップで2017年に閉店した。この映画のキャッチコピーは「カニエもファレルもヴァージルも夢中になった、パリの名店『コレット』が映画に!」である。このコピーで若いヤツに響くんだろうか。別のコピーでは「あの伝説的ショップを追体験できる?」。「?」が付いているところが正直でいい。

閉店までの日々を追った映像、そして同店のファンである世界中のファッション関係者が店への熱い思いを語る場面などから構成されている映画らしいが、なんでまた閉店から3年ほどした今、こんな映画が公開されているのだろうか。邪推すれば、仕入先への多額の未払金がそろそろ忘れ去られようとしているからなのではないだろうか。

コレット・ルソー(Colette Roussaux)と娘のサラ・アンデルマン(Sarah Andelman)母娘のインタビュー記事を読んだことがあるが、「大手企業が札束を詰めたトランクを持って、多数店の買収に来ているが、全て断っている」と母親が語っていたのを思い出す。まあトランク1個分の札束ならせいぜい2億円ほどだろうから、そんな金額ではそりゃ売らないだろう。それは手付金ではなかったのだろうか。ファッションと文化を巧みに結び付けて、たしかに一斉を風靡したことは認めるが、なぜ閉店したのだろうか?なぜ各国で多店舗展開したりフランチャイズをしなかったのだろう?なぜ多数押しかけて来た買収希望者に売り渡さなかったのだろう?そういう疑問が一気に噴出してくるのである。この映画、見てもいないのに不謹慎ですけれども(笑)。

店なんていうのは、なぜ流行ったのかよりもなぜ閉店したのかの方に興味がある者なので許していただきたい。むしろ描くのであれば、落ちぶれた?あるいは20年間の間に十分稼げるだけ稼いだこの幾分ウサン臭い母娘を描くべきなのではないだろうか。「ファッション」などというお祭り騒ぎをやるのは、一部のラグジュアリーブランドに任せておけば十分なのではないか。それよりも消えていった才能あるデザイナーたちを偲ぶような映画でも作ってみてはどうなのだろうか。真実というのは、燦々と光り輝く日向にではなく、闇と隣り合わせの薄暗い陰にこそ潜んでいることを、モノを描きつくる者は肝に命じてほしいものである。

この映画上映だけでなく、渋谷パルコ2階2Gでは、御丁寧に「コレット・モン・アムール ポップアップストア」が10月11日までオープンしている。「サカイ(sacai)」のテディベア「コロタン」の限定版(45,000円)、「ヒューマンメイド(Human Made)」とのコラボのバンダナ(映画を象徴するロゴとイラストプリント。2,200円)などが売られている。映画よりもむしろこのコラボポップアップストアの方が目玉なんだろうな。情けないこと夥しい。

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