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2021年秋冬オートクチュール ベスト3

Jul 28, 2021.もりかおりTokyo, JP
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「ゴルチエ・パリ・バイ・サカイ」オートクチュールより

2021-2022秋冬パリ オートクチュール コレクションが7月5日から10日まで発表された。一時期はプレタポルテのデザイナーが飽和状態だったことから、そのサポートの場として、招待メンバーと称して若手たちがクチュール期間中に発表し、話題作りにも貢献した。しかし現状はデジタルコレクションへの切り替えもあって、純粋なクチュール発表の場に落ち着きつつある。今シーズンはフィジカルでの発表が増え、オートクチュール の存在感をアピールするかのような華やぎが戻ってきた。

ベスト1
「ゴルチエ・パリ・バイ・サカイ(GAULTIER PARIS BY SACAI)」本来は昨年披露する予定だったが、コロナの影響で一年越しの発表になった阿部千登勢とのコラボレーションは最初から最後まで興奮が止まらなかった。ファッションが一番エキサイティングだった80年代を、大いに盛り上げていたデザイナーのひとりであるゴルチエの記憶に残るデザインの数々が、サカイ最大の特徴であるハイブリットスタイルに落とし込まれていく。トピックスでも挙げたアライアの現デザイナー、ピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)は今は亡き創始者に対しての思いとして「クリエーションのアプローチを想像するしかなかった」と記しているが、ゴルチエとサカイに関しては、創始者直々のオファーであり、ゴルチエが見守る中での製作は心強くもあり、プレッシャーも相当なものだったと想像する。そうした中でリスペクトとクリエーション、その塩梅が最高潮に達したと感じるコレクションだった。サカイ流のハイブリットがクチュール界のこれからにどう影響をもたらすかも楽しみだ。あと1シーズン見届けたい気持ちがいっぱいだが、それは叶わぬ夢なのか。

ベスト2
「バレンシアガ(BALENCIAGA)」

53年もの時を経てさらにメゾンの50回目のクチュールという記念すべきコレクション。現アーティスティック・ディレクターのデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)にとっては初めてのクチュール発表になる。プレタポルテでは老舗メゾンの重圧を跳ね除け、ストリートにまで影響を及ぼす作風でファッション界に新風を巻き起こしたが、今回は自身のテイストをクチュールというフィルターに通して極めてモダンに昇華させた。バレルルックやコクーンシルエットなど数々の伝説を生み出し「クチュール界の建築家」と称された創始者の最高レベルのカッティングとシルエットを、現代のハイテク技術と結びつけ進化させた作品は「モードの実験場」と呼ばれるクチュールに成功という結果をもたらせたコレクションだった。男性モデルが着用したスーツも登場し、時代に目を向けた性差を超えた提案にデムナらしい強い意志を感じた。

ベスト3
「シャネル(CHANEL)」
ヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)が就任して以降の「シャネル」はいい意味でコンセプチュアルから離れた小気味いい自然体の美しさが魅力となっている。マリー・ローランサンやベルト・モリゾ、マネなど印象派の絵画から着想を得たドレス群は、ブラックアンドホワイトのシャネルカラーに滲むような淡い色彩がキャンパスのごとく重ねられ、可憐で華やかな印象だ。最高レベルの職人たちによる装飾技術の上に成り立つ軽やかさが現代のクチュールらしさに繋がった。

他にも「シャネル」同様に女性デザイナー、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が手がける「ディオール(Dior)」でも日常とクチュールとのバランスを探ったフェミニンなドレスに共感し、キム・ジョーンズ(Kim Jones)による2回目の「フェンディ(FENDI)」では様々な世代のスーパーモデルたちによる美しさの境地を見た。さらに「ヴァレンティノ(VALENTINO)」は装飾以上に際立つ美しいカッティングと色彩のモダンさに目を奪われた。若手と老舗が切磋琢磨して作り上げる最高峰のクリエーションの数々は、コロナ以降塞ぎ込んでいた世界にファッションの楽しさと高揚を与えたと言えよう。

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