三越伊勢丹は、10月1日から伊勢丹新宿店に常設買取・引取サービスの「アイム グリーン(i'm green)」をオープンした。これは三越伊勢丹が、家庭で使わなくなった品物を買取または引取をし、次につなげていくサービス。ものを簡単に「捨てない社会」を目指すための取り組みで、直営の買取・引取サービスが常設されるのは、百貨店初。昨年の10月から行われた店舗での検証で、顧客の30%がリピーター化したことや、1年で約2,000件の利用実績が得られたことを受けての本格オープンとなった。
「アイム グリーン」では、具体的に衣料品、バッグ、時計、宝石、骨董・美術品などが対象となる。直営のカウンターまたはインターネットで査定が行われ、その後売却や引取という形で、「捨てる」という選択肢をなくすべくリユースまたはリサイクルされる。値段がつかなかったものや一部の衣料品は、資源として原料へリサイクルされるなど、様々な形で循環型社会の実現を目指す。手続き方法は、直接店舗へ足を運ぶ方法と、宅配を利用した在宅型の方法が用意されており、顧客は最適な方法でサステナビリティ活動に参加することができる。将来的には、値段がつかなかった品物を、学校法人などの外部団体と協業しながら、百貨店ならではのシナジーを活かしてリメイクやアップサイクルなどを施し、新しい価値を持つものに生まれ変わらせる取り組みに進化させるべく現在模索中だ。
この取り組みの背景には、三越伊勢丹のウェブ会員やアプリ会員に対して行われたサステナビリティアンケートで、衣料品回収の取り組みへの関心といった顧客の環境意識の高まりが関係しているようだ。昨今、SDGsといった言葉の認知度の高まりなどを受け、企業のCSRを重視する風潮がある。CSRとは、企業の社会的責任を指し、利益追及や法令厳守にとどまらず、ステークホルダーや環境への配慮、また社会貢献といった様々な内容に対し、企業が適切な意思決定を行う責任のことだ。特に、「SDGsネイティブ」とも言えるZ世代などがこれからの消費の中心を担っていく今後、CSRというキーワードははその企業の将来性を握っている。
CSRの一環として環境問題に焦点を当て、三越伊勢丹のようにリサイクルやアップサイクルなどの取り組みを進める企業は多く、その方法は多様化している。眼鏡の生産地として有名な福井県鯖江市の内田プラスチックでは、若狭湾に漂着したペットボトルを原材料にサングラスのフレームを製作している。「オーシャングラス」と名付けられたこのサングラスは、持ち主がデザインに飽きてしまった時のために、ネジや金属を一切使わずリサイクルしやすい設計になっている。最初から最後まで、リサイクルについて考え抜かれたアイテムだ。ファッション業界でもリサイクルといった話題への関心は高く、5月には「ロンハーマン(Ron Herman)」が「ポロ ラルフ ローレン(Polo Ralph Lauren)」へ別注したTシャツが発売された。このTシャツには、「ラルフ ローレン(Ralph Lauren)」のリサイクル素材である「アース ポロ(Earth Polo)」が使用された。「アース ポロ」は、リサイクルされたプラスチックボトルのみを原料とした素材だ。現在「ラルフ ローレン」では、2025年までに全製品に1億7,000本のペットボトルをリサイクルするという目標を掲げ、取り組みが行われている。また、伊勢丹新宿店で10月6日からポップアップストアをオープンさせる「季縁-KIEN-」は、京都発の着物アップサイクルブランド。昭和50から60年代に作られた留袖を中心に、ドレスやワンピースにアップサイクルしている。
環境問題やその他社会問題への関心の高まりから、様々な企業で取り入れられているCSR。その方法は、年々多様化している。身近な企業がどのようなCSRを行なっているのか、自分が購買することで社会にどのような影響が与えられるのか、ショッピングを楽しみながら自分たちや社会、環境の未来について考えていきたい。