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三浦彰WWDジャパン元編集長が回顧する2020年その2「デジタル化で進む『ファッションの民主化』」

Dec 4, 2020.三浦彰Tokyo, JP
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2020年には、コロナ・パンデミックによって新しい「言葉」がかなり生まれた。12月1日に発表された恒例の「流行語大賞」には、「三密」が選ばれた。この他にもノミネートされたベスト30には、「新しい生活様式/ニューノーマル」「アベノマスク」「アマビエ」「ウーバーイーツ」「エッセンシャルワーカー」「おうち時間/ステイホーム」「オンライン〇〇」「クラスター」「GoToキャンペーン」「自粛警察」「ZOOM映え」「ソーシャルディスタンス」「テレワーク/ワーケーション」「濃厚接触者」「PCR検査」とコロナ関連語が半数を占めた。本来なら「コロナ」が大賞だと思うが、純粋な新語ではないからこれは対象から除外されたのだろうか。

ファッション業界での「新語」ということになると、コレクション発表形式について、「フィジカル」(観客を入場させて実際にモデルを使ってキャットウォークショーを行う)か「デジタル」(撮影した映像を、YouTubeなどで配信する)かという選択が話題になった。2月、3月の2020-21秋冬ウィメンズコレクションでは、デジタル配信が大勢を占めたが、9月、10月の2021年春夏ウィメンズコレクションでは、「フィジカルショー」がかなり増えた。

『ハーパーズ バザー』のオンライン版(10月28日)でエイミー・デ・クラーク(Amy de Klerk)は、「フィジカルorデジタル コロナ禍でのパリコレの集客力はどちらが優位?」というタイトルでコラムを書いている。その中でWWDにデータを提供したデータ分析会社のリスン・ファースト(Listen First)は「キャットウォークショーとデジタルを融合させたブランドがオンラインだけを選択したブランドより成功した」と結論づけていると書いている。

まあ、言わずもがなの結論で、当たり前と言えば当たり前である。そもそも『ヴォーグ』や『ハーパーズ バザー』が逆の結論を引用するなんてことがあるのだろうか(笑)。ファッション業界はパリコレを中心に回っているという大前提で動いているのだが、2020年はそれを考え直す良い機会になったのではないだろうか。パリコレに参加することを最終目標にしているファッションデザイナーのなんと多いことか。しかし、冷静にパリコレやミラノコレを見てみると、もうそこに流行・トレンドに影響を与えるようなパワーはなくなったという状況が、ここ10年ほど続いている。私には、パリコレ、ミラノコレはブランドのPRの舞台と考えている一部のラグジュアリーブランドのための「祭典」のように思われる。もちろん「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」「シャネル(Chanel)」「グッチ(Gucci)」の年商がそれぞれ1兆円を超え、これに匹敵する「エルメス(Hermes)」「YSL」「ディオール(Dior)」などの巨大ラグジュアリーブランドを加えれば、それだけも十分なセリングパワーを持っている中核があるわけだが、それ以外の周辺のブランドにとって、果たしてパリコレ&ミラノコレがどれだけ意味があるのかは大いに疑問だ。まずここを舞台にして羽ばたけたデザイナーというのがこの10年で片手にも満たないという事実がある。無名デザイナーは自分のビジネスを軌道に乗せるためにコレクションショーが最適なものなのか、コストも含めて再考すべきだろう。その意味でコロナ・パンデミックがもたらしてくれたデジタル発信は未来につながる道であり、光がかすかだが見える。パリコレという絶対君主が君臨するファッション業界は民主主義の現代において生き残った中央集権主義に見える。

「デジタル&リモート」が注目されたコロナ・パンデミックの中で、ビジネス面で一層躍進したのは、Eコマース=ネットショッピングであった。当然の成り行きだろう。三密を避け、ソーシャルディスタンスを保ち、試着された商品や什器の徹底した消毒など店舗運営は厳しさを増した。その上、非常事態宣言で店舗閉鎖を余儀なくされて、日銭が入らなくなった小売業は手元資金が底をついて、倒産の危機と背中合わせの日々を送ることになった。

そうした中で、快走を続けたのがEコマース=ネットショッピング企業だ。特に個人・小規模事業者向けECプラットフォームの運営企業のBASE(2012年12月設立、2019年10月25日東証マザーズ上場)は、第3四半期でついに黒字化した。香取慎吾を起用したTVCFが話題だが、「ネットショップを30秒、しかも無料で開設」がキャッチフレーズだ。開設後の売り上げに対して手数料を徴収するシステムだ。すでに130万件のネットショップが誕生しているが、その半数はファッション関連だという。株価は新型コロナウイルスの脅威が本格化し株式相場が大暴落した3月13日の714円が今年の底値だったが、1万7240円(10月8日)まで急騰した。その後、海外大株主や国内大株主サイバーエージェントが利益確保で大量売りし、現在は8000円台まで急落している。株価はともかく、このBASEのような企業こそ「ファッションの民主化」を推進する旗手なのではないだろうか。このBASEの共同創業取締役は家入一真(いえいりかずま)氏だが、国内最大のクラウドファンディングサービスの「キャンプファイヤー」の代表でもある。11月13日にはこの「キャンプファイヤー」とBASEの資本業務提携が発表され、BASEは「キャンプファイヤー」に出資を行った。株式市場は、このBASEの動きに嫌気をさして株価は急落を続けた。しかし、このBASEとキャンプファイヤーこそ、資本のない零細ファッション企業やデザイナーにとっては、まさに希望の光であろう。「才能も夢もあるのに金がないばかりに世に出れない」などということがあってはならない。2020年は、パリコレに代表される「ファッションの中央集権主義」とデジタルによって活路が開かれつつある「ファッションの民主化」が交差する年であったと今後振り返られることがあるだろうか。

 

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