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三浦彰WWDジャパン元編集長が回顧する2020年その1「アパレル卸売業と百貨店の今後」

Nov 27, 2020.三浦彰Tokyo, JP
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新型コロナウイルスの発生源とされる中国(PHOTO:SEVENTIE TWO)

今年も余すところ1カ月になった。今年のファッション業界を振り返って、「重大」ニュースを集め、来年への指針を探ってみたいと思う。

2020年は総括するのには簡単な年である。新型コロナウイルス (COVID19)との闘いの1年だったということができる。ファッション業界においてもこれと無関係な事象はほとんどなかったと言ってよいだろう。全世界の感染者は6000万人を突破、死者は143万人。日本では感染者は14万人、死者は2000人目前だ(11月27日現在)。昨年12月中旬に中国・武漢市で集団発生した新型コロナウイルスによる肺炎がその発端だ。日本では1月16日に中国から日本に帰国した中国人が初の感染者として確認された。その後、2月3日に周遊を終え横浜港に帰港した大型客船ダイヤモンドプリンセス号から大量の感染者が出たことにより、新型コロナウイルス の存在が大きな脅威になることが危惧されたものの、未曾有の感染拡大になるとの予測はほとんどなかった。1918-19年のスペインかぜ(感染者5億人、死者4000万人)には及ばないとしても、これほどの規模の疫病というのは、「第二次世界大戦終了後、人類にとって最大の危機」と語る識者が多い。ある意味では、これは一種の「戦争」であり、現在はきわめて特殊な状況だと言えるだろう。

個人的な感想だが、この1年で強く感じたのは政治の無策と医学の無力だ。現状認識の甘さと施策実行の遅さにあきれ、ワクチン開発にこれほど時間がかかるとは思いもよらなかった。

欧米に比べて、アジアでの感染はまだ軽度であるのは幸いにしても、現在の最大のポイントはいつ終息するのか?だろう。米ファイザーなどの予防ワクチンが早ければ今年12月から接種されるとの報道があり、期待されている。しかし、その効能、貯蔵法、日本での接種時期などまだまだ未知で、来年1年はこの新型コロナウイルスとの闘いは続くと見なければならないだろう。だとすれば、それを前提にした企業戦略が求められることになる。ただ、淘汰のスピードは加速していくだろう。私は、1982年以来日本のファッション&アパレル業界を取材して来たが、すでに1979年の第二次オイルショックでアパレル業界の成長期は終わっていた。80年代はバブル景気の恩恵をうけたのは円高を追い風にしたインポート業界だった。国内のアパレル産業はバブル景気のオコボレに預かっていたに過ぎなかった。1990年にバブル経済が弾けた後は、長い長い低迷が続いた。アパレル消費の中心は、百貨店からショッピングセンターに移行し、その主要テナントだったSPA(アパレル製造小売業)がその主役に躍り出た30年間だった。

一時は、百貨店をメインにするアパレル卸売業ではトップの座に君臨していたレナウンが、このコロナの年に経営破綻。民事再生法適用を申請していたが、その後の主要事業の売却によって申請は東京地方裁判所によって却下され自己破産することになった。レナウンに代わって1990年代以来トップの座に君臨していたオンワードホールディングスも昨年2月決算発表時に700店、今年2月決算発表時に700店の店舗閉店を発表するなど全世界3000店のうちほぼ半数を閉店するなどで赤字転落。レナウンは厳密にはコロナ破綻とは言えないし、オンワードHDもコロナ発生以前から「異変」が起きていた。両社ともコロナでトドメを刺された格好ではある。これに次ぐ存在であるTSIホールディングスも赤字転落、三陽商会も2015年のバーバリーショック(バーバリー社とのライセンス契約終了)以来赤字から抜け出せない。いわゆる大手総合アパレルという卸売業者は縮小均衡策&EC化促進を進めているが、立ち直っても従来のような収益構造は見込めないだろう。

こうした納入業者の「百貨店離れ」によって、百貨店の空床が問題になっている。対応策としては、化粧品売り場の拡大、一時は削減や撤収の対象だった家具・インテリア売り場の復活や拡大、アウトドア・スポーツ関連売り場の拡大などが代表的な施策ということになるだろう。ラグジュアリーブランドの売り場拡大も考えてはいるのだろうが、掛け率が折り合えるのかどうか。ラグジュアリーブランドのとんでもない巨大ショップが誕生する可能性もある。いずれにしても、インバウンド需要に頼ってきた都心百貨店は思い切った手に出ることも考えられる。もう中途半端な弥縫策ではこの難局は切り抜けられないだろう。

米国では、5月7日にニーマン・マーカスが破産法を申請し、コロナ倒産第1号になった。5月15日はJ.Cペニーが、8月2日には、百貨店と専門店の中間業態であるロード・アンド・テイラーがそれぞれ連邦破産法第11条を申請し倒産した。『ニューヨーク・タイムズ』の記事の引用だがコロンビア大学のビジネススクールのマーク・コーエン教授は「百貨店は長い間低迷してきた。今回の危機を乗り越えられる企業はないだろう」と語っているという。アメリカで起こることを追随するのが日本の業界である。コロナ破綻第1号の百貨店が来年あたりに出るということもあり得るかもしれない。

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