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バーバリー社の売れ残り商品廃棄処分の意味すること

Sep 14, 2018.久米川一郎London, GB
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バーバリー公式サイトより

9月6日、Burberry(バーバリー)社のマルコ・ゴベッティ(Marco Gobbetti)CEOは、売れ残り商品の廃棄処分の即日中止やリアルファー使用の段階的中止、切り落としレザーの再利用などの「サステイナブル(持続可能)」戦略を発表した。同社はクリエイティブ・ディレクターをクリストファー・ベイリー(Christopher Bailey)からリカルド・ティッシ(RiccardoTisci)に代えて、この9月17日に初めてのコレクションショーがロンドン・ファッションウィークで発表される予定だが、それを前にしての今回のサステイナブル戦略の大綱発表になった。
特に注目されるのは、売れ残りの廃棄処分だ。昨年同社は2,860万ポンド相当(約41億4,700万円*)の衣料品、アクセサリー、香水などを廃棄していたという。その年商の4億3,300万ポンド(約3,962億円*)からみれば、1%にも満たない金額だが、最近の「サステイナブル」を意識する時代風潮からすれば「とんでもない資源のムダ使い」ということになり、環境資源保護団体からの非難の的になっていたという。特にラグジュアリー・ブランドの売れ残り商品の処分は、ハンドバッグやアクセサリーなどでは次シーズンでも販売されるケースはある。いわゆる「キャリー販売」であるが、トレンドに左右されることが多い衣料品は、バーゲン(これすら行わないブランドは多いが、バーゲンも1回というのが普通)後は、税務署員の立ち会いのもとで、焼却処分されるのが普通だ。焼却分は貸借対照表から在庫資産の減少として処理される。Burberry社の2018年3月期の売上高は前年並みの27億3,300万ポンド(約3,962億円*)、純利益は前年比5%増の4億6,700万ポンド(約677億円*)だったという。純利益率で15.2%。恐らく営業利益率は30%近くあるだろうから、一般のブランドのように下手にバーゲンを繰り返して、ブランドのプレステージを下げたり、シーズン遅れ品としてアウトレットで販売したりするよりも、焼却処分してしまった方が手間が省けるから、ほとんどのラグジュアリー・ブランドがそうしているように、従来は焼却してきたのだろう。しかし、Burberry社のように上場企業はかなりの情報をディスクローズしなければいけないから、環境資源保護団体からの指摘を受けることになるのだ。そんなことなら、積極的にサステイナブルな企業としての宣言をしてしまった方が、新生「Burberry」にとってメリットがあるという判断がなされたのではないだろうか。いずれ、上場していないラグジュアリー・ブランドにもこうした「サステイナブル」な姿勢を求める指摘は波及することになるだろう。例えば「CHANEL(シャネル)」のように、総売り上げの半分近くが衣料品の非上場企業のブランドにとっては、大きな問題になる可能性もある。まさか「CHANEL」のツイードジャケットをアフリカの恵まれない少女にプレゼントするわけにもいかないだろうから。
「サステイナブル」の嵐は、儲け過ぎのラグジュアリー・ブランドにとって、今後様々な難題を突きつけることになるだろう。

*1ポンド=145円換算(9月14日現在)

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