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海外販路の拡大で増収増益、「モンクレール」も採用するファッション・テキスタイルメーカー

Apr 17, 2018.高村 学Fukui, JP
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吉岡隆治社長

今年、創業70周年を迎えた第一織物(日本・福井県)は、独自開発した合繊高密度織物を「Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)」や「Moncler(モンクレール)」、「Prada(プラダ)」といった世界的ブランドへ提供していることで知られるファッション・テキスタイルメーカーだ。国際的なテキスタイル見本市に出展することもなく、自力で海外での販路を開拓してきた。主力商品であるDICROS(ディクロス)は世界的ブランドとして認められ始め、また昨今のスポーツ系ブランドのブームのなか、さらなる成長を目指す。31才で経営を引き継いで以来、36年に渡り同社を率いてきた吉岡隆治社長に、これまでの海外戦略について話を聞いた。

「高密度織物だけを手掛けてきたおかげで、私どもの商品がブランド化しつつあります。ですから国際的なテキスタイル見本市に出展する必要性を感じていません。それよりも海外の良いエージェントや良いお客さまと直接つながることの方が大事だと考えています」。年間25回にも及ぶ海外出張を十数年にわたり続けてきた吉岡社長は、「語学が達者でもなく、海外が得意でもない人間でしたが、すべて自力で開拓してきました」と、輸出を志向し始めた22年ほど前を振り返る。

第一織物は、絹織物の製造を祖業とする。26年前、町工場から近代的な製造工場化を目指し福井県の郊外へと工場を移転、同時に働く環境の改善にも着手した。その後、スポーツ衣料用としての高密度織物の開発・販売にシフトしていくもその当時は「マーケットが存在しなかった」という。「今でこそダウンはタウンユースとして当たり前のアイテムですが、20年ほど前はスキー場か登山で着るものでした。ですから、ポリエステルやナイロンのコートやジャケットがまさかこのようにタウンユースとして流行るとは誰も思っていませんでした」。

吉岡社長は、“世の中にないものを作る”を信条とする。そのため「開発した商品は、世界中どこにもないものですからマーケットイン自体が無理」だったという。そこで、海外へ販路を求め、韓国、中国そしてヨーロッパへと自らマーケットを切り開いてきた。高密度織物のマーケットができあがっていくのと一致するように第一織物も成長を遂げていく。数年前に海外企業の売上比率は70%に達し、「差別化された素材を見てみたい」と福井県の本社には海外企業がこぞって足を運ぶほどだ。

昨年末、英国BBCからの取材で「こんな田舎にある会社になぜビッグメゾンが毎シーズン注文を入れてくるのか」との質問に、「愚直に良いものを作っているだけだ」と答えた。65才で引退するつもりでいたが、67才になった今も社長として世界中の取引相手を納得させる物作りに挑み続けている。

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