「フランフラン(franc franc)」は日本成長投資アライアンス(J-GIA)を事業パートナーに迎えて、2021年9月から新たな経営体制に入る。J-GIAは博報堂と日本たばこ産業が設立した投資会社で、同社の投資事業有限責任組織を通じて、「フランフラン」に出資(出資比率51%)する。創業者の高島郁夫社長は2021年8月末に退任し、佐野一幸取締役業務執行役員が後任社長に就く。
これに先立つ7月にはフランフラン社株の49%を保有するセブン&アイ・ホールディングスがその25%程度を前述の日本成長投資アライアンスに売却した。日本成長投資アライアンスは創業者の高島家から25%程度を買収し、今回51%の過半数株式保有になった。
セブン&アイは、若者や女性向けの品揃え強化のために2013年に「フランフラン」と資本業務提携を結んでいたが、当初見込んでいたような相乗効果が出ず、また2兆円あまりを投じてアメリカのコンビニ事業を買収していて、コンビニ事業に経営資源を集中する方針のためだという。
「フランフラン」といってもピンとこない読者も多いだろう。昔上場していた時代の社名はバルス。2012年にMBO(経営者による買収)で東証一部上場企業バルスは上場廃止になった。例によって「買収リスクを避けるため。さらに長期的な経営ができない」などを理由にしていたが、リーマン・ショックでかなりガタついた経営内容がその最大要因である。このあたりからバルスの業績は坂道を転げ落ちるように悪化していった。2017年9月には、社名をバルスから主軸ブランドの「フランフラン」に変更した。
最大株主のセブン&アイから三下り半をつきつけられて、新たな受け皿を求めて奔走していたようだ。幸い、コロナ禍の巣ごもり需要もあって、昨年はまずまずの業績(そうはいっても最終利益は12億7900万円の赤字)、さらに、4月には250人の本社スタッフを150人までにリストラ。今から思えば、今回の日本成長投資アライアンスへの株売却をにらんだ施策だったようだ。しかし、1990年バルス設立、2002年JASDAQ市場で株式公開、2005年東証2部上場、2006年東証1部に指定替えするまでの嵐のような成長の16年間の後に、ホームファニッシングの雄「フランフラン」に何が起こったのか。
考えられるのは、リーマン・ショック以降に客が離れてしまったのだ。「フランフランはオシャレだけど少々高い。ダサくてもいいから、私はこっちを買うわ」ということになったのだろう。
その「こっち」とは言うまでもなく「ニトリ」である。
「フランフラン」がMBOして上場廃止した2012年のニトリの2月決算は売上高3310億円、営業利益579億円。
これが9年後の2021年2月期の決算は、売上高7169億円、営業利益1376億円。まさに「フランフラン」は蛇ににらまれたカエルといったところであろう。まあ、年商300億円ほどの「フランフラン」が自分たちの立ち位置を確保することができるのかどうか、佐野一幸社長の手腕に注目したい。