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Japan|ハースト婦人画報社が新事業「ハーストメイド」を始動 年内にはデータスタジオも開設

Apr 9, 2019.高村 学Tokyo, JP
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山口大介・ハースト婦人画報社広告本部長 Photo:Manabu Takamura

『ELLE Japon』を始め、『婦人画報』、『25ans』、『Harper's Bazaar』等を発行するハースト婦人画報社が、「デジタルパブリッシャー」への移行を加速させている。近年では、デジタルメディアとして『Cosmopolitan』、『Women's Health』を創刊、GoogleHomeやAmazon Alexaに対応した音声コンテンツのサービスも開始し、デジタル事業の拡大によって2018年度は増収増益を達成した。データを主軸とするビジネスモデルへの変革を推し進めるなか、社名を冠した新事業「ハーストメイド(HEARST made)」が2019年1月にローンチした。メディアの総合力と良質なデータベースを融合させ、様々なマーケティング・ソリューションを提供していく。

その陣頭指揮を執るのが山口大介・広告本部長だ。2019年7月にはデータマネージメントを事業化した「ハーストデータスタジオ東京」も立ち上げる。「メディアのブランドビジネスを追求することは、自分のミッションでもある」と山口氏は語る。「ハーストメイド」は、広告事業に置き換えると、初年度で『25ans』、『ELLE Japon』に次ぐ3番目の売上規模に成長する見込みだという。雑誌や書籍以外でのマネタイズ、特にデジタル分野で収益をあげることはどの出版社にとっても喫緊の課題だが、この領域ではハースト婦人画報社がリーダーシップを発揮している。山口本部長に「ハーストメイド」の戦略について話しを聞いた。

SVT:「ハーストメイド」とはどういった事業でしょうか。
 山口大介(以下、山口):まず、部門を横断して当社の総合力を発揮できる体制を構築したということです。取引先から課題をいただいた時に、「ハーストメイド」を軸にCRM事業本部やデジタル本部等の部署が連動して対応していきます。「ハーストメイド」には『MEN'S CLUB』元編集長の岡良知治が率いるコンテンツマーケティング部門や『婦人画報』前編集長の出口由美が率いるデジタル・動画コンテンツ制作部門のクリエイティブラボと営業を担うビジネスディベロップメントで構成されます。雑誌を経験した編集者はストーリーテリングに非常に長けている。プリント出身の編集者ですが、デジタルや動画に対する情報の吸収力は図抜けています。取引先からのニーズの吸収も非常に早い。そして、CRM事業本部には70万を超える極めて質の高い顧客情報がデータベース化されています。つまり、こうしたデータを基軸にした戦略策定から効果測定までを、クオリティの高いコンテンツとともに提供できるのが「ハーストメイド」です。


SVT:現状の広告代理店やマーケティング会社に満足していないブランドも多いようです。
 山口:そのようなご意見をラグジュアリーブランドから耳にする機会もあります。例えば、そういった会社に市場調査を依頼した場合、あがってくるデータは一般的な(セグメントされていない)データであって、ラグジュアリーブランドにはなんの参考にもならない場合が多い。当社の場合、ウェブ閲覧者、定期購読者、イベント参加者、コマース購入者がすべて「ハーストID」というデータに集約されています。そうすると、きっちりセグメントされたインサイトをしっかり深掘りすることができ、ターゲット層に刺さるコンテンツを数字とともに表現することができます。実は、当社のメディアが成長している背景はそこにあり、これが「ハーストメイド」の強みです。

SVT:データの質が比べものにならないということですね。
 山口:そういうことです。当社には、ライフスタイルからラグジュアリーまで幅広くメディアが揃っています。当社のウェブメディアがどう伸びているか、どのようなコンテンツがトラフィックを生みエンゲージメントを高めているか、そしてどんなSNSに注力しどの様なコンテンツを展開すべきか、ブランドの成長にとって必要な知見が数多く集まっているのです。単に良いコンテンツを作ればトラフィックが生まれるわけではありません。

SVT:「ハーストメイド」は単体でも収益も生み出す事業体です。
 山口:メディアのブランドビジネスでどうマネタイズしていくか、ということは広告本部の責任者として常に考えていることです。実は旧アシェット婦人画報社時代に、『Gentry』、『La Vie de 30ans』、『Vingtaine』、『marie claire』の4誌の休刊という非常に悔しい経験をしました。当時の経営者は、各セグメントでナンバーワンになれなければ生き残ることができない、だから早々にデジタル化へ移行するという方針でした。それは確かに正しい決断でしたが、ただ広告と販売以外の収益がもしあったら、その4誌は休刊せずに済んでいたかもしれない。その頃から、広告、販売に次ぐ第3の収益の柱については考えていました。

SVT:年内には「ハーストデジタルスタジオ東京」も開設予定です。
 山口:本国のハースト社は300以上もの雑誌を発行するアメリカ最大規模のメディア・コングロマリットですが、実はコマースが一番進んでいるのは日本です。つまり、当社はコマース事業の成長によって豊富なデータを獲得することができています。人に対するデータ分析とコンテンツに対するデータ分析のこの2方向を中心として、データマネージメントの充実化を目指します。

SVT:デジタル領域においては出版業界でリーダーシップを発揮されています。
 山口:他社を競合という視点で見ることはなくなりました。良質なデータを保有していながら、それを有効活用できていないのではないか、という視点で見ていますね。メディアの輪郭が非常にはっきりしていて、読者のプロファイルが明確であれば貴重なデータを収集することができます。そういった企業と提携してそのデータを一元管理したら、おそらくどこにも負けないデータベースができあがると思って見ています。メディア企業同士が提携して相乗効果を出していくこともこれからの業界にとっては必要なことではないでしょうか。

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