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やっぱり「東証1部」から「プライム市場」へ移行でき(し)なかった企業が多かった繊維・アパレル業界

Jan 14, 2022.三浦彰Tokyo, JP
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東京証券取引所は今年4月4日(月)から新市場区分(プライム市場、スタンダード市場、グロース市場)による取引をスタートする。プライム市場はグローバル企業(時価総額100億円以上)中心、スタンダード市場は実績のある大企業や中堅企業(時価総額10億円以上)中心、グロース市場は新興企業向けという定義で、1月11日には、上場企業3777社の移行先を公表した。プライム市場には東証第1部に上場の2185社のうちその84%にあたる1841社が移る。グローバル企業中心とは言いながら、グローバル企業とは言い難い企業も含めて東証1部企業の大半がほぼ移行した。またその基準に満たない企業でも当面プライム市場に上場できる経過措置(徐々に基準を満たす努力を確約)を申請する企業が多く、変化と新鮮味に乏しく何のための市場再編なのか疑問の声も少なくない。

現在の東証1部の時価総額は約740兆円。先頃1社で時価総額300兆円を突破した米国アップル社の例を持ち出すまでもなく、ニューヨーク証券取引所の4分の1以下で、上海証券取引所にも追い越されている有り様。今回の新市場区分は市場を分かりやすくして海外投資家を呼びこみ株式相場の活発化および時価総額増大が狙いらしいが、どうもあまり変わり映えしないようだ。

従来でも「東証1部」というレッテルにはかなりの重みがあったが、今回の「プライム」というレッテルが是非とも欲しいという企業は多かったようだ。「当社は、現在たまたま業績不振だが東証一部企業として長い歴史がある。プライム市場に移行するのが当然」というプライドの高い企業が多いのは理解できる。今回の区分は、各企業からの申請に基づいて決められている。しかし、その申請があまりにも妥当性を欠いた「高望み」の場合には東証との話し合いが持たれたようだ。もちろん「現在東証1部だが4月から『プライム』は荷が重い」ということで、「スタンダード」を最初から申請した身の程をわきまえる企業もあった。

構造不況業種で、また2年続くコロナ禍の影響をかなり受けた繊維・アパレル関連業界では、東証1部企業であっても、プライム市場には移行できずに、あるいは移行せずにスタンダード市場へ移行する企業が目立った。

まず繊維関連で東証1部から「スタンダード」へ移行した企業には:
ソトー(旧社名蘇東興業)、東海染工、ダイニック、日本フエルト、片倉工業、トーア紡コーポレーション、ダイトウボウが挙げられる。片倉工業や日本フエルトなどの名門企業が含まれている。

一方、東証1部から「スタンダード」に移行したアパレル&ライフスタイル関連企業には:
ジーフット、キャンドゥ、オンリー(2022年1月18日で上場廃止)、フェリシモ、はるやまホールディングス、タカキュー、キング、ナイガイ、ヤマトインターナショナル、タキヒヨー、ダイドーリミテッド、キムラタン、ルックホールディングス、クラウディアホールディングス、愛眼、ナルミヤ・インターナショナル、近鉄百貨店、井筒屋。

やはりダイドーリミテッド(旧社名大同毛織)、名古屋アパレル業界の盟主ともいえるタキヒヨー(旧社名瀧兵)、ナイガイ(旧社名内外編物)などの名門企業の名前が見える。ちなみに紳士服チェーンでは業界1位の青山商事、業界第2位のAOKIホールディングス、業界第3位のコナカは「プライム」だが、第4位のはるやまホールディングスは「スタンダード」へ移行した。

東証1部からスタンダード市場への移行は「降格」のように受け取られがちで、イメージ低下につながるという捉え方もあるが、社業のグローバル展開もないままに、「プライム」に移行してもさしたるメリットはないということからスタンダードを申請した企業もある。なお上場費は数百万円で、若干「プライム」の方が高い。

また注目されていた6期連続赤字決算中の三陽商会は、経過措置を申請して今回プライム市場に採用された。海外での社債発行の予定や海外投資家に株を買ってもらって、時価総額100億円(1月14日現在約105億円)をキープする狙いがあるのかどうか。「プライム」でも「スタンダード」でもいいが、100万円でもいいからなんとか2022年2月期には7年ぶりの黒字化決算を果たして株主に報いてもらいたいものだ。

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