BUSINESS NEWS
  • share with weibo
  • share with LINE
  • share with mail

Japan|「レリアン下請イジメは誤解」の本当の問題点とは?

Feb 20, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
VIEW43
  • share with weibo
  • share with LINE
  • share with mail
レリアン公式HPより

レリアンに公正取引委員会の査察が入って同社に下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)に違反する行為があったとして2020年2月14日に勧告が行われた。レリアンが下請業者を搾取してイジめているという風に思われた。

ところが、レリアンと取り引きをする10社が2月18日に記者会見を行い、「レリアンによって我々がイジめられている認識はない」と主張し、今回の勧告の発表の前に「勧告中止」を強く公正取引委員会に上申書の形で要請。しかし、この上申書が功を奏さず発表されてしまったとしている。レリアン商品を納入している13社のうち今回10社が記者発表に参加しているが、他の3社も同様の見解だという。公正取引委員会は、レリアンは13社に対して返品などで23億円の被害を与えたとしてレリアンに返還を求めているが、13社はこの23億円の受け取りも辞退するという。

なぜ、こんな不可解なことが起こったかというと、この13社は下請法が本来適用される対象ではなかったということなのである。下請法が定義する下請業者というのは単に発注者の指示に従って商品を生産して納入して期日までに代金を受け取り返品は受け取らない業者のことなのだが、レリアンの場合13の納入業者はこうした下請業者ではなく、自ら企画した商品をレリアンが気に入って注文してくれれば「レリアン(Leilian)」ブランドとして生産して納品し、上代設定も自ら行い、返品も受ける業者だったのである。

では、なぜ公正取引委員会は13社を下請業者と認定してしまったのか。これは査察に入った時に、レリアンと13社の間に明確な契約書が存在しなかったということに尽きるのである。レリアンと13社の「パートナー関係」をきちんと書面にしておけば、こんな事態にはならなかったはずである。

今回は、日本の専門店と納入業者あるいは日本の百貨店と納入業者というものの間は、いわゆる「アウンの呼吸」というか口約束で成り立っていて、契約書という形で残っていない事実を白日のもとに曝したと言えるだろう。それが良い時もあっただろう。モノが売れて売れてしようがなかった時代は。しかしこれだけ状況が厳しくなってくると、契約書が存在しない取引はいずれトラブルの原因になってくるのではないか。このあたりに、日本のファッション業界の後進性が潜んでいる。

そして、「レリアンが我々納入業者をイジメているという事実はありません」と上申書が出たにもかかわらず、調子っぱずれの勧告を行った公正取引委員会というのは、どういう存在なのだろうか。いまや存在さえ忘れ去られようとしている下請法という存在を世に知らしめるためレリアンは「イケニエ」になった観はあるが、公正取引委員会はもう少しやるべき重要な仕事がありそうに思うのだけども。

それともうひとつ。レリアンの「パートナー」の13社の下には、それこそホンモノの下請業者と言える縫製工場が控えているのだ。レリアンの多くは百貨店のシルバーエイジ対象エリアに店舗を構えている。つまり百貨店→レリアン→納入業者→下請業者という複雑な構造になっている。こうした構造でもそこそこの利益が出ているのだから、百貨店の商売というのは、まだまだ改善することが多いのではないだろうか。

READ MORE