そしてこの1ヵ月で注目すべき大企業の赤字ということになるとメガバンク筆頭の三菱UFJ銀行が10〜12月の第3四半期決算で2074億円の特別損失を計上し、四半期ベースでは11年ぶりの赤字決算になったことが挙げられる。この特別損失は2019年4月に子会社化したインドネシアのバンクダナモンの株価が50%以上下落したことによるのれん代の一括償却を行ったことによる。行き場を失った資金が海外企業投資して手痛いヤケドを負うというケースだが、今後パンデミックによる全世界的な株価低迷が続いていくと、こうして評価損を計上しなくてはならない大手企業が出現して、その悪影響がさらなる金融不況に連鎖するケースを予測させるような三菱UFJ銀行の巨額減損処理である。
■SBGのメインバンクのみずほファイナンシャルグループ
メガバンクの減損処理ということになると昨年3月決算で6800億円という巨額の減損処理を行って、従来予想の5700億円から800億円へ連結純利益を大幅下方修正したみずほファイナンシャルグループが思い出される。その中核企業であるみずほ銀行は、この記事の冒頭で紹介したSBGのメインバンクである。20兆円の有利子負債があると言われているSBGのメインバンクがどれほどの貸付けを行って、どれほどの投資を行っているかは定かではないが、少なくともメガバンクとはいえ支え切れない水準なのではないかという指摘もある。
3月25日には格付会社ムーディーズ・ジャパンがSBGの格付けをBa1からBa3へ一気に2段階引き下げホームページに掲載したことに対して、その8分後SBGは「ムーディーズの格付けの取り下げについて」という怒りのリリースを公表。「誤った理解と憶測」という内容だった。その2日前にSBGは最大4.5兆円の保有資産売却と資金化プログラムを発表したばかり。「この株価低迷の時期に何故?」とムーディーズ・ジャパンはSBGのキャッシュフローがきわめて逼迫していると判断したようなのだ。
■電通が808億円の最終赤字
最近の大手企業の赤字ということになると業界に衝撃の走った最大手広告代理店電通の昨年12月期連結決算の808億円の最終赤字(前期は903億円の黒字)。赤字幅は2001年の上場以来最大でリーマン・ショックのあと2009年12月期以来の赤字だ。M&Aした海外企業ののれん代の減損処理で約701億円を計上している。コロナ・ショックによる東京オリンピック延期のツケをモロに食らうことになるのはマーケティング専任代理店の電通だろう。来期も赤字か。
いずれにしてもコロナ・ショックによる株式市場の下落はいろいろな方面に波及していく。2008年9月15日のリーマン・ショックによって引き起こされた世界金融恐慌はその影響が完全になるなるまで10年かかったと言われる。今回のコロナ・ショックから立ち直るまでにまた10年かかるのだろうか。原油価格の動向と合わせ、しばらくは予断を許さない状況が続きそうだ。