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Japan|なぜサニーサイドアップは6億円でステディスタディを買ったのか?

Jan 31, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
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東証一部上場企業の総合PR会社サニーサイドアップグループが、ファッション系PR会社のステディスタディの全株式を6億円で買って傘下に収めた。これはなかなか興味深い取り引きである。サニーサイドアップは現社長の次原悦子氏が1985年にPR会社として創業し、90年代に中田英寿らトップアスリートとマネジメント契約をして飛躍のきっかけを掴み、2010年にシドニーの人気レストランの系列店「ビルズ(bills)」1号店を七里ヶ浜にオープンして大ヒット。2010年には大証ヘラクレス市場に上場も果たしている。2018年には9月5日に東証二部に指定替えされ、12月3日に東証一部へ。2020年1月1日にはホールディングス制をとって、サニーサイドアップグループを設立した。事業領域は、PR事業、プロモーション事業、スポーツマーケティング事業、フードマーケティング事業、新規事業開発などに及んでおり、サニーサイドアップグループの2019年6月決算は、年商は146億円、営業利益6億1000万円、経常利益7億1800万円、当期利益5億9300万円。社員はグループ全体で約500名の社員がいる。時価総額は160億円。一言で言うとこの創業者の次原悦子女史はとんでもない「ヤリ手」である。創業以来35年、その辺にあるなんでもないPR会社があっという間に一部上場会社というのだから呆気にとられる。

一方、買われたステディスタディも、ファッション業界では伝説的なPR会社である。設立は20年前の2000年。創業者の吉田瑞代氏は、80年代にDCブームを作ったニコル社でPRをやっていた女性。独立してステディスタディを立ち上げた。デザイナーのエディ・スリマン(Hedi Slimane)と親しいことから「サンローラン(Saint Laurent)」「ディオール オム(Dior Homme)」などを独立当初は手掛けていた。ちなみに吉田姓は離婚した夫君でデザイナーの吉田十紀人氏の苗字だ。吉田十紀人氏は美容家の藤原美智子氏と結婚している。40名ほどの社員を抱えるファッション系PR会社というのは、この分野では大手と言ってもいい。年商は5億円程度だが、人件費が経費の大部分だから売り上げの10%程度の営業利益が出ているようだ。

サニーサイドアップが6億円でステディスタディの全株式というのは、まず妥当な値段ではないだろうか。サニーサイドアップがファッション分野のPRに参入したのはここ5年ほど前のことだから、ステディスタディのもっているファッションPRのノウハウを欲しかったということはあるだろう。ステディスタディとしても、一部上場企業の傘下に入ることで経営の安定を図るというのは悪くない話であろう。ファッション業界というのは、消長の激しい世界である。特に洋服が売れなくなっている今の時代では、安定した経営基盤を持っていないと簡単に立ち行かなくなってします。

数年前には、電通が出資している広告会社のザ・ゴールの個人株主から、株を買うという数億単位の取り引きがあった。この個人というのは、中堅広告代理店の双葉通信から独立してザ・ゴールを電通の出資とともに立ち上げた人物だった。広告会社としてザ・ゴールが軌道に乗って来た頃合いを見て、電通はこの個人株主からザ・ゴールの株を買い取っている。電通の子会社政策として100%出資が原則だからという理由のようである。海外ラグジュアリー・ブランドは、PR業務は日本の現地法人内で賄うケースが多いが、それだけでカバーするのは難しく、こうした外部広告会社をサブ的に使うケースが少なくない。

今回のサニーサイドアップによるステディスタディの吸収も、数年前の電通によるザ・ゴールの完全子会社化も大手資本によるファッション業界への参入が続いているということだろう。ファッション業界は全体では決して儲かっているわけではないがステディスタディやザ・ゴールのようにラグジュアリー・ブランドを中心に海外ブランドとの強いパイプを持っている企業にはまだまだ活路があるということなのだろう。前述した電通にザ・ゴールの株を売って数億円を得たのも女性だったし、今回のディールも双方とも女性創業者であり、ウーマンパワーは凄いもんである。

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