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経営危機のトッズ社の株式をLVMHが買い増し。その今後を占う

May 6, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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ケリングジャパンの日本新本社になった表参道の旧トッズビル

昨年3月の日経不動産マーケット情報「ケリングがTOD’S表参道ビルを取得」を読んだ驚きが今回思い出された。表参道の店舗ビルをケリング関連と見られるSPC社が取得したという情報だ。このビルは日本建築界の大御所である伊東豊雄が設計して、トッズ社の日本市場本格参入拠点として、2004年から旗艦店およびオフィスとして使用してきた。表参道のけやき並木をモチーフにしたビルも素晴らしい建築だと大絶賛されたものである。しかし、表参道のこの巨大な店舗に客が入っているのを見るのは稀であったので、「トッズ」の売れ行きを心配はしていた。持ち主もトッズグループの総帥であるディエゴ・デッラ・ヴァッレ(Diego Della Valle)の個人資産会社が保有すると聞いていたが、いずれにしても表参道に「ショールーム的アンテナショップ」を悠長に構える余裕はなくなったということだろう。

今回驚いたのは、買い手がケリングの関連会社だったことだ。ケリングはやはり表参道の旧ベネトンビルを買って「サンローラン(Saint Laurent)」の旗艦店にしていたが、今回のトッズビル買収が続き、表参道に並々ならぬ関心を示しているのが分かる。昨年10月にはケリングの日本新本社として堂々オープンしている。2021年には「ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)」の新たな旗艦店が1〜3階にオープンする予定だ。トッズグループは1990年代の「グッチ(GUCCI)」(ケリングブループの中核ブランド)買収騒動(結果は失敗)の際には、買収側のLVMHに加担する動きをしたので、この取り引きは意外だった。しかし、LVMHは、基本方針として不動産にはあまり関心がないのである。LVMHグループの総帥であるベルナール・アルノー(Bernard Arnault)の実家は不動産屋であるにもかかわらずである。聞くところによれば、「不動産の利回りよりも、ラグジュアリーブランドビジネスの方が断然儲かるので不動産なんて馬鹿馬鹿しいのだ」そうである。なるほど軽く20%以上の売上営業利益率を叩き出すLVMHだからこその考え方であろう。

話を元に戻すと、トッズ社は現在かなり経営状態が厳しい。そこに飛び込んできたのが4月22日のLVMHがトッズ社株を買い増しして、従来の3.2%から10%に引き上げたというニュースだった。取り引きの内容は、トッズ社のディエゴ・デッラ・ヴァッレ会長兼CEO(最高経営責任者)が運営するディエゴ・デッラ・ヴァッレ社からLVMH子会社のデルフィーヌ社に総発行株式数の6.8%にあたる225万株が7400万ユーロ(96億2000万円、1ユーロ=130円換算)で売られた。この取り引きによりディエゴ・デッラ・ヴァッレ社の株保有比率は63.64%に下がった。トッズ社はコロナ禍によって2020年の売上高が前年比36%減少しており、2019年に続いて2年連続最終赤字になっており、2021年も3年連続の最終赤字が濃厚だ。ちなみに2019年12月期の同社の年商は189億1610万ユーロ(1190億円)で前年比97%、そのうち「トッズ」の売り上げは4億6180万ユーロ(600億5400万円)だった。今回のLVMHの買い増しについて「20年来のトッズとのパートナーシップを強化できてうれしい」と語ったベルナール・アルノーLVMH会長の発言はおそらく額面通りで、現時点では友好的な買い増しだろう。ディエゴ・デッラ・ヴァッレは2002年からLVMHの取締役を務めており、まさにグッドパートナーではある。

今年2月にLVMHはドイツのフットウェア「ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)」を買収した。今後のLVMHの買収の方向性は「靴」だと述べたが、「トッズ」もスノッブなモカシンドライビングシューズで一世を風靡したブランドだが、ラグジュアリーブランドになりきれたかと言われれば最近の長引く不振を見るとそうは言いきれない。ここ3年ばかりの経営危機はかなり深刻であり、LVMH傘下に入って経営立て直しという非常事態もあるかもしれない。

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