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Japan|セレクト・ショップの落日近し!?

Mar 12, 2019.久米川一郎Tokyo, JP
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閉店した「フレッド シーガル」代官山店 Photo by Manabu Takamura

米国・西海岸発のセレクトショップ「フレッド シーガル(Fred Segal)」の国内唯一の店舗である代官山店が1月末に閉店していたことがわかった。同店が東急電鉄が開発した代官山ログロードにオープンしたのは2015年4月。目抜き通りからかなり離れ、また地型も悪い細長い物件にウィメンズ棟、メンズ棟と分かれた展開で、不便な立地でラグジュアリー感のない店舗で、閉店もやむなしという感じだ。

日本における「フレッド シーガル」の展開については、ガールズ系アパレルのマークスタイラーが2012年にライセンス権&独占輸入販売権を取得したものの、本体マークスタイラーの業績悪化で、諸戸インベストメントと関連会社のセレンディップ・コンサルティングに譲渡。諸戸インベストメントは三重に本拠を置く林業出身の投資会社。2号店を2016年3月に「マリン アンド ウォーク ヨコハマ」、3号店を2017年3月に大丸神戸店の旧居留地にそれぞれオープンした。しかし、2017年8月にはヰノセントが「フレッド シーガル」本国とライセンス契約を締結。ヰノセントの共同経営者兼クリエイティブディレクターの藤田浩行氏がフレッド シーガル ジャパン(FSJ)を設立し、社長に就任。諸戸インベストメントから代官山店と神戸店の事業を譲り受ける一方で、横浜店は諸戸インベストメントが閉店していた。また、神戸店も新生FSJが2018年9月に閉店。

FSJの藤田社長は、もともとはセレクトショップ「ナノ・ユニバース(nano・universe)」の創業者だ。事業拡張のために、東京スタイルの出資を受けていたが、東京スタイルがサンエーインターナショナルと合併し、TSIになり、その後TSIを追われる形で独立していた。

今回の日本での「フレッド シーガル」の見苦しいまでの迷走ぶりを詳述したが、本国サイドは日本撤退はないとしているが、これだけのブランド棄損ダメージがあっては復活は難しいだろう。そもそもサザビーリーグが手掛けた「ロンハーマン(Ron Herman)」が望外の大成功を収めたのを横目にしてこの西海岸セレクトブームに乗ろうとした人々が織りなした迷走劇ではある。もともと「ロンハーマン」はショッピングモール「フレッド シーガル」の1ショップだったわけで、「ロンハーマン」があれほどなら本家の「フレッド シーガル」はもっと儲かるに違いないという安易な類推が生まれたに過ぎない。

しかし、もう一歩踏み込んで今回の迷走劇を見てみると、なんとなく1990年代後半から延々と続いてきたセレクトショップ・ブームにも勢いが感じられなくなっているのではないかという思いに襲われるのだ。

セレクトショップ・ブームはやはり1980年代後半、渋谷における「ビームス(Beams)」の隆盛に端を発している。やがて「渋カジ」ブームと連動して一大潮流になり、「ビームス」の専務だった重松理氏がワールドの資金援助を得て独立し、「ユナイテッドアローズ(United Arrows、以下UA)」を設立。30年経って連結で年商2000億円企業になった。これに上野発祥の「シップス(Ships)」、「ベイクルーズ(Baycrews)」、関西の「アーバンリサーチ(Urban Reseach)」などが加わって、特に日本のメンズ・ファッションを牽引した。すぐにこぞってレディースウェアにも本格進出して、拡大が続いた。

こうしたセレクトショップは百貨店には売り場を作らず、ショッピングセンターでの50坪〜100坪の展開がメインになった。百貨店に代わってショッピングセンターがファッション購買のメインになり、セレクトショップは勢力を拡大した。2000年以降は日本のデザイナーブランドや古着で差別化するちょっと毛色の異なるTOKYO BASEや「フリークスストア(Freak’s Store)」のデイトナインターナショナルなどのセレクト企業も急成長した。しかし、ここにきてショッピングセンターの購買力に陰りが見られると同時に、そろそろセレクトショップの成長にも?が点滅しようとしているように思う。

例えばグループ内に「エストネーション(Estnation)」というセレクトショップチェーンを擁しているサザビーリーグは、やはりセレクト業態の「アメリカンラグシー(American Rag Cie)」を1998年に本国との合併で80%出資の形でアメリカンラグシー ジャパンを設立。しかし、2008年をピークに売り上げが低迷。20周年の2018年春に全国5店の店舗を閉鎖し撤退。なお伊藤忠商事が今年日本における「アメリカンラグシー」のマスターライセンシー契約を締結し、傘下のコロネットが運営を担当。昨年末からECでの展開が始まっている。

また、アパレルメーカーのジュンも「アダム エ ロペ(Adam et Rope')」によるセレクトショップ・ビジネスを行なっているが、「ビオトープ(Biotope)」業態と並んで「アダム エ ロペ」の「顔」ともいうべきセレクトショップ「メゾン ド リーファー(Maison de Reefur)」の休止が3月4日にブランドプロデューサーであるタレントの梨花のInstagramで発表された。現在、代官山本店のほかには池袋パルコ、ルミネ エスト新宿、ルミネ横浜、名古屋高島屋ゲートタワーモール、JR博多シティの5店で展開されている。梨花は「私の力不足も含めてこの大きなビジネスを保つことがとても難しいと感じるようになりました」と語っている。2012年4月12日に代官山店をオープンしているから7年目の挫折ということになる。「7年経って自分の力不足を感じる」というのはちと鈍すぎる。一時は代官山店は年商20億円(そのうちの半分近くはEコマース)あったと言われている。いわゆるタレント・セレクトショップというやつだけれども、タレント・ブランドと同じでやはり難しいものであるのだろう。「フレッド シーガル」「アメリカンラグシー」「メゾン ド リーファー」とセレクトショップに関する悪いニュースが続いているが、これがセレクトショップ・ブームの終わりの始まりでなければよいのだが。

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