2年続けての大赤字。売上高もついに1兆円を割り込んでしまった。汐留の本社も売却される予定であり、頼みの綱の東京五輪も風前の灯である。電通グループであるから、株価もさぞや売り叩かれているのだろうなと思いきや、これがこの2年間における最高値を記録しているというから不思議だ。2015年に新入社員が自殺し、これが過労による労災認定を受ける前の2015年8月11日の7,290円という史上最高値にはもちろん及ばないが、それでもこの大赤字で危急存亡の今、株価が上昇を続けているのだ。この決算発表では、発行済株式総数の5.32%にあたる1500万株、300億円を上限にする自社株買いの実施とともに、すでに支払い済みの1株47円50銭の中間配当に加えて期末でも23円75銭の配当を支払い、年間で71円25銭(前年95円)、総額200億円の配当を支払うことも同時に発表されている。合わせて500億円の株主対策ということになる。本社ビル売却に加えて保有するリクルートホールディングスの株の売却益1550億円があるにしても、この株主対策は大盤振る舞いだ。こうした涙ぐましい努力があって、株価を維持するどころか上昇させてはいる。
ここまで悪材料が出尽くしているのだから、今期以降は浮上すると投資家は見ているのだろう。国家権力との癒着商売がその本質でこれだけ嫌われながら、不思議と「電通不要論」というのはなかなか聞かないのだ。むしろ電通グループが仮になくなってしまっても、その代わりになるような企業が見当たらないという「電通必要悪論」が根強いということなのだろう。そうしたことでこの体たらくにも拘らず、株価は上昇を続けているのだ。「電通必要悪論」を是認する方々は電通グループ株を保有してみてはどうだろうか。2015年の7,290円は無理にしても、5,000円ぐらいは狙えるかもしれない。
なお言うまでもないことだが、仮に上記2銘柄を購入して被害を被った場合でも、当方は一切責任を負いません。投資は自己責任で行ってください。