コンデナスト・ジャパンの雑誌「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」の渡辺三津子編集長が、年内で同職を退任する。渡辺編集長は東京女子大学を卒業後、資生堂の企業文化誌「花椿」編集部でキャリアをスタートし、1996年「フィガロ・ジャポン」、1997年に「エル・ジャポン」編集部を経て、2001年に前身のVOGUE NIPPONのファッションフィーチャーディレクターに就任。その後、斎藤和弘前編集長の後任として2008年に編集長になった。13年間編集長を務めたことになる。後任は未定だが、同社によると北田淳社長がコンデナストグループの米国版「VOGUE」の編集長兼グローバル・エディトリアル・ディレクターのアナ・ウィンター(Anna Wintour、1949年11月3日生まれ、71歳)と話し合って後任編集長を決めるという。
え!?後任も決まっていなくて、辞めちゃうんだ。いわゆる人事異動ではなくて、渡辺編集長が自ら退任するということだが、13年も編集長をやっていた人の辞め方にはとても思えない。きちんと後任を決めずに、急に辞めちゃったというようにしか思えない。しかも世の中がコロナ禍に喘いでいる最中にである。当然のことながら「VOGUE JAPAN」といえども、厳しい経営状態にあることは容易に推察できるから、何かあったのだろうかと勘繰りたくもなってくる。健康問題以外にちょっと理由が思いつかない。
まさか天下のコンデナスト=VOGUEがと思われるだろうが、コンデナスト自体の経営状態も芳しくない。同社が2018年に「Wマガジン」をフューチューメディア・グループに売却した際に、2017年には1億2000万ドル(約130億円=、1ドル=109円)の赤字を計上し、レイオフも行われ14ある同社の雑誌のうち、売却対象外は「ヴォーグ(VOGUE)」「ヴァニティ・フェア(Vanity Fair)」「ザ・ニューヨーカー(The New Yorker)」の3誌だけだと報道されたが、その後この件に関する報道はなかったが、コロナ禍が本格化した昨年4月には、スタッフにEメールで送付した覚書によると、減給および一時帰休に加え、解雇も近々に実施するという。同社は全世界の従業員および6000人の「1桁台前半の割合」を解雇すると、情報筋は話している。5%としても300人のレイオフが全世界で実施されるということだ。コロナ禍への対応としては、この時点ではコンデナストのライバルであるハーストやメレディスなどは具体的な経営合理化策を打ち出していなかった。今回の渡辺編集長の辞任もこのコンデナスト社のグローバルレイオフの一環だということもありそうだが、後任も決めずに編集長のような「雑誌の顔」であるポストの人間をレイオフするとは思えないのだが。
ずいぶん昔の話になるが、コンデナスト社がヘッドハンティング会社に出している条件で絶対なのは「編集長経験者であること」だった。渡辺編集長はその数少ない例外だったわけだが、次期編集長が誰になるのか興味津々である。アナ・ウインターの女帝ぶりを描いた「プラダを着た悪魔」が公開された2006年あたりが「VOGUE」の絶頂期だと思うが、編集長人事がこんなに注目されるのだから、やはり「VOGUE」ということなのだろうか!