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「アトモス」396億円買収は本当に妥当なのか?

Aug 13, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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PHOTO:SEVENTIE TWO

スニーカーショップ「アトモス(atmos)」などを展開するテクストトレーディングカンパニーの本明秀文(ほんみょう・ひでふみ)社長(1968年生まれ53歳)というのは、なかなか面白い男である。WWDジャパンの連載などでその「ビッグマウス」ぶりを遺憾なく発揮している。アメリカ・フィラデルフィアの大学を卒業していて、ストリート・ファッションになかなか詳しい人物のようで、今の時代のライフスタイル・ビジネスでの儲け方が身についている人物という確かな手応えがある。そのテクストトレーディングカンパニーを、米国大手スポーツ専門店のフットロッカー(Foot Locker)が3億6000万ドル(396億円*)で買収するというと発表があった。「アトモス」の人気は知っていたが、驚いたのはその金額だ。ケタが間違っているのではないかと思えるほどの巨額だ。

そのメインである「アトモス」は日本国内で39店舗、日本以外では10店舗を展開し、2020年度の売り上げは1億7500万ドル(192億円*)。世界のスニーカー・カルチャーのけん引役とも言われている。またその売り上げの60%はECによるものだという。しかし年商192億のほぼ2倍の今回の買収金額。小売企業ではありえない水準だ。営業利益率が軽く10%以上はあるということだろう。同社は非上場会社なので、同業の大手企業ABCマートのコロナ禍前の2020年2月決算を調べてみると:

・売上高2723億6100万円(前年比+2.1%)

・営業利益433億7400万円(同-1.3%)

・経常利益433億2500万円(同-1.8%)

・親会社に帰属する当期純利益297億600万円(同-1.9%)

同社決算も久方ぶりに見てみたが、相変わらず売上高営業利益率は15.9%と高水準だ。スニーカーブームの恩恵を目一杯享受しているABCマートのような企業は、「タダの小売企業」と考えてはいけないのだ。ましてやもっとマニアックな品揃えを行なっている今回買収されたテクストトレーディングカンパニーのような企業の営業利益率は前述したように10%どころか、軽く20%を越えていることが予想されるのだ。年商200億円で営業利益はざっと40億円。これなら買収価格396億円は納得できるのだ。全くもって、今のスニーカー時代の寵児ということだろう。53歳の創業者社長の本明氏は2000年に裏原で起業。裸一貫から一代で今回400億円を手にしたスニーカー長者で、藤原ヒロシ、NIGOなんかよりも「裏原」の英雄と呼ぶにふさわしい存在かもしれない。フットロッカーによって買収後の本明氏がどんなポジションになるのかはまだ定かではないらしいが、足を洗うにはまだまだ若く、もう一勝負たくらんでいるかもしれない。少なくともスニーカーの時代はもうしばらく続くことは間違いないようだ。

*1ドル=110円換算(8月13日時点)

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