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高島屋とH2Oリテイリングの資本提携解消の本当の理由

Nov 4, 2022.三浦彰Tokyo,JP
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写真:日本橋高島屋と阪急うめだ本店

阪急阪神百貨店を傘下に持つH2O(エイチ・ツー・オー)リテイリングと高島屋は資本提携を解消する(既報)。

え、まだ提携していたのか?が業界関係者の本音だろう。この両社が3年以内の経営統合を目標に資本・業務提携を発表したのは、2008年10月10日だ。2008年9月15日に勃発したリーマン・ショックの25日後だ。このリーマン・ブラザーズの倒産に端を発したリーマン・ショックはその後10年間にわたって、世界経済を大停滞させた。これに加えて、日本では消費税が2014年4月1日から5%から8%へ、2019年10月1日に8%から10%へアップした。特に8%から10%へのアップは決定的に消費を萎縮させている。そして2020年2月からはコロナ・パンデミックが襲ってくる。つまり2008年9月15日以降日本の消費は経済それ自体の低迷に加えて、息つく間もなく悪条件にさらされ続けてきたのである。今回の高島屋とH2Oリテイリングの資本提携解消の背景を考える上でこうした14年間を思い出して欲しい。

そうした背景の中で、百貨店業界の再編の引き金を引いたのは、2006年にセブン&アイ・ホールディングスによるそごう・西武の2000億円買収だ。今にしてみればそごう・西武は「弱者連合」だった。続いて2007年に阪急百貨店と阪神百貨店の合併によるH2Oリテイリング誕生、2007年大丸と松坂屋の合併によるJ.フロントリテイリング誕生、2008年伊勢丹と三越の合併による三越伊勢丹ホールディングスの誕生といった具合だ。いずれも、主導したのは阪急百貨店、大丸、伊勢丹だった。例えば三越伊勢丹ホールディングス誕生は、大阪北口駅ビル再開発に手をこまねいていた三越が伊勢丹の助けを求めたことが発端になっている。

こうした合併ムーブメントの中で取り残された業界のジャイアント高島屋が食指を伸ばしたのがH2Oリテイリングだった。しかし、前述したように2008年9月15日のリーマン・ショックで状況は一変。とても合併でスケールメリットを競うような時代では無くなってしまったのだ。そうした中で、前述した2008年10月に締結された3年以内の経営統合を目指した資本業務提携は、2010年3月に白紙撤回され、その後お互いの株を持ち合う資本提携だけはなぜか続いていた。

H2Oの荒木直也社長は今回「株式の持ち合いに対する資本家の目線が年々厳しくなっている」と今回の資本提携解消の理由を語っているが、それは表面上のことだろう。荒木社長は2020年4月1日にH2Oリテイリング社長に就任して2年、一方、高島屋は村田善郎社長が2019年2月1日に社長就任以来3年半。ともに実力派社長で合理主義者であり、半ば形式化したこの資本提携を解消するには頃合いのタイミングだと判断したのではないか。

そもそも、こうした合併では必ずどちらかが主導権を握るのは前述した通りだが、高島屋とH2Oリテイリング(中心的存在は言うまでもなく阪急百貨店)の場合、日本一の規模と歴史を誇る高島屋と秀れたMD力と人材を誇るH2Oリテイリングではどちらが主導権を握るのかきわめて難しかったのではないだろうかと推察する。

結局H2Oリテイリングは高島屋株の約5.3%を保有しその売却で約38億円の投資有価証券売却益計上、高島屋はH2O株の約5.1%を保有し同様に26億円の売却益を計上する。

まあ形式だけの提携を12年も続けていたところが、いかにも動きの鈍い百貨店らしいが、これだけの売却益計上なら「よしとしよう」というところなのではないだろうか。今後も不採算店の閉鎖など、基本的に百貨店経営は縮小均衡が続いていくわけで、リーマン・ショック以前のスケールメリットを競ったり、資本業務提携などは「強者(つわもの)どもが夢の跡」ということなのだろう。

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