エルメス・インターナショナル2021年12月決算が2月18日に発表されたが、注目すべきことが2つあった。ひとつは日本円換算(1ユーロ=130円)で、同社が1兆1693億円(89億8200万ユーロ)をマークして、「エルメス(HERMES)」単体でも、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「グッチ(GUCCI)」「シャネル(CHANEL)」と並んで1兆円ブランドになったこと。そしてもうひとつは日本における「エルメス」の売上高が1271億9690万円(9億7700万ユーロ)だったことだろう。特に地域別の売り上げはなかなか公表されることがないので、今回の日本での年商の発表はたいへん注目された。では、1990年代から日本のラグジュアリーブランド業界トップを独走していた「ルイ・ヴィトン」の売り上げはどうなっているのか気になるところではある。ラグジュアリーブランドには、2008年9月のリーマン・ショックによる減収、2014年4月1日の消費税5%から8%への引き上げ、2019年10月1日の消費税8%から10%への引き上げという3つの関門があった。しかし「エルメス」は、他のラグジュアリーブランドが大減収した2008年9月のリーマン・ショックでもほんのわずかに減収を記録しただけで、2014年、2019年ともに堅調な伸びを示していたからだ。今回の発表を見て、「ルイ・ヴィトン」のトップの座は大丈夫なのかと思わずにはいられなかったのだ。
業界関係者から2021年12月決算における「ルイ・ヴィトン」の日本での売り上げは2000億円程度という数字を入手することができた。かなり信頼できる数字でやはり王者は揺るがない強さを維持しているようだ。ちなみにLVMHジャパンは2021年で約6000億円の年商を計上している。その3分の1が「ルイ・ヴィトン」ということで、まあこれは妥当な数字だろう。LVMHの年商8兆円だから、それをみるとすでに日本はその7.5%までシェアを下げていることになるが、昨今のナショナル・パワーの減退からみて納得できる水準とも言える。2000年前後にはLVMHにおけるLVMHジャパンのシェアは15%前後だったと記憶する。LVMHジャパン傘下としてはルイ・ヴィトンジャパン株式会社(この傘下にはLVMHファッショングループ・ジャパン株式会社とベルルッティジャパン株式会社、フェンディ・ジャパン株式会社がある)に匹敵する存在としてクリスチャンディオール株式会社があるが、こちらは2021年の年商はファッション&アクセサリーが400億円程度だ。一方パルファンクリスチャンディオール株式会社が同ブランドの化粧品を扱っているが、20221年のその年商は約350億円程度で、「シャネル」の化粧品の売り上げを抜いたのが大きな話題になっているという。
さて全世界1兆円ブランドとしては、「ルイ・ヴィトン」「グッチ」「シャネル」そして今回「エルメス」が加わったわけだが、日本での店舗数はそれぞれ「ルイ・ヴィトン」56店鋪(2021年6月9日現在)、「グッチ」52店舗前後、「エルメス」41店舗(いわゆる直営店29店舗とそれに準ずる店舗12店舗)からなる。
さて、ケリングの屋台骨を支える「グッチ」ブランドの日本での売り上げは、2000億円の「ルイ・ヴィトン」、1271億円の「エルメス」に対してどのくらいなのか?2015年1月のメンズウェアのコレクションから、アレッサンドロ・ミケーレがフリーダ・ジャンニーニの後任リエイティブ・ディレクターとして、どん底状態だった「グッチ」をその後の3年ばかりで立ち直らせたわけだが、もちろん日本でもその恩恵は受けている。しかし欧米や中国ほどではなかったというのが実情のようだ。加えて2020年2月からのコロナ禍によるインバウンド需要の消滅打撃になっており、現在「ルイ・ヴィトン」「エルメス」にかなり遅れをとっているというのが業界関係者の見方だ。それでも、ミケーレ効果で日本でも2018年あたりには年商1000億円は記録したはずで、巻き返しに注目したいところだ。