・「ほぼ日手帳」は96万部で過去最高、北米売上が全体の3分の1に拡大
・定款変更で「宿泊」「旅行」「公衆浴場」などを追加
・糸井重里氏は会長CEOに、小泉絢子氏が新社長に就任
・米国子会社、Hobonichi Inc.を設立し、北米での拡販を本格化
■さて、ほぼ日の売上構造とは?
純利益4億4800万円(+12.3%)と、地味に見えても、2ケタ成長を維持。「ほぼ日手帳」96万部が中心だが、収益を支えているのは実はグッズ・文具・イベント事業。年間売上のうち約25%、20億円前後が「手帳以外の物販」と推定される。
だが注目すべきは、売上の3分の1を海外が占めるようになった点だ。もはや「日本の文具会社」ではない。ウェブ・出版・イベント・ECを横断する「編集メーカー」。思想を商品に変換する装置として、糸井の哲学を収益構造にまで落とし込んでいる。
■「人から仕組みへ」への転換
10月22日、代表取締役社長が交代。糸井重里氏は会長CEOに、新社長には副社長COOの小泉絢子氏が就任した。2001年入社の小泉氏は、現場を知り尽くした実務派。糸井さんの考え方を現場で翻訳し続けてきた人物だ。つまり、糸井=コンセプト、小泉=仕組み。「人から仕組みへ」という進化がようやく制度として完成した。これまで「糸井重里株式会社」と揶揄されていた会社が、「糸井流哲学を持つ組織」へと自立したことを意味する。
■アメリカ法人は文化の翻訳だ
11月、米国子会社のHobonichi Inc.を設立。CEOは糸井本人。北米では「ほぼ日手帳」は「スケジュール帳」ではなく、「自分を描くノート」として定着している。糸井がやろうとしているのは輸出ではなく文化の翻訳だ。日本語の思想を英語で売るのではなく、現地の感性で再編集する。それが糸井流のグローバル戦略である。
■定款変更の狙いは「体験産業」
同社は11月29日付で定款を変更。「宿泊施設」「観光施設」「旅行業」「公衆浴場業」などが追加された。事業目的が「文具販売」「出版」から「生活体験事業」「海外拠点運営」などに拡大されたんだ。TOBICHIやイベント運営で培った「場づくり」を、生活空間にまで拡張するフェーズに入ったといえる。つまり、「生活そのものを企画する会社」へ進化しつつあるのだ。しかし、「公衆浴場業」とか楽しみだな。
■株価とシグナル
業績も体制も整い、株価は一段高をうかがう動き。ただし、ドンと跳ねるタイプじゃない。10月22日終値は3,345円(−0.45%)。株価は小動きだが、経営の構造転換は確実に進んでいる。いよいよ成長よりも「持続」で評価される段階に入った。年間配当は30円(予想)で利回り約0.9%。巳之助の読む押し目は3,000〜3,200円だな。
巳之助は「クリエイティブ」と「経営」で少し迷うけど。
プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。