その他、シーズンや男女のコレクション発表という枠に囚われずその表現方法を模索している「グッチ」や「ボッテガ・ヴェネタ」が別の発表手段に切り替え、「ジル・サンダー」はパリコレクションへ移行。こうなってくるとデジタルでの発表なのに都市分けして日程を調整する必要があるのか?という議論が交わされそうだが、そこは取りまとめる協会をはじめ様々な事情があるのだろう。今回は協会の示すミラノファッションウィークに則って行われたブランドの中から私的ベスト3を挙げた。
●ベスト1「PRADA」
ファーショールの裏面やドレス全面にスパンコールを配して煌びやかなドレスアップスタイルの一方で、グラフィカルなボディスーツをインナーにスーツのレイヤードスタイルで展開された「プラダ」。先シーズンからミウッチャ・プラダと共同デザイナーになったラフ・シモンズとのコンビネーションも2シーズン目にして絶妙な仕上がりだ。ミウッチャのグラマラスで女性的な観点とラフのグラフィカルでミニマルな視点のバランスが程よくて、二人のやりたいことへの折り合いの付け方にも大人のやりとりが垣間見られる。コレクションの後のデザイナー二人を囲んだディスカッションも必見で、彼らの脳内を覗き見ることができるお楽しみ付きだ。次代を読み解く先見性と感性が鋭い二人なので、仲違いしないか不安だが、長く続いてくれることを期待。
●ベスト2「VALENTINO」
コロナの影響で国を跨いでの移動が憚られる中、パリから本拠地イタリアに戻ってきたのがピエールパウロ・ピッチョーリによる「ヴァレンティノ」だ。今回のコレクションはミラノの劇場を会場にライブ配信された。ライブならではの編集の許されない緊張感と、生演奏と生歌の声の響きや震えは、リアルタイムでこその心の振動が伝わり、このコレクションは画面越しであってもライブで見ることの大切さを感じさせた。そして圧巻の黒と潔いミニ丈のオンパレード!気品と若々しさ、グラマラスとミニマルが同居する美しいコレクションだ。
●ベスト3「MM6 MAISON MARGIELA」
マルジェラグループのラインなのでパリと思われがちですが、ここ数シーズンはミラノで発表している。ジョン・ガリアーノによる「メゾンマルジェラ」がかなりガリアーノによるこのメゾンの解釈になったことでこちらの「エムエム6 メゾン マルジェラ」は創始者マルタンの姿勢を貫いているようだ。逆再生したショー構成はそれにつながるインサイドアウト(裏返し)、アップサイドダウン(逆さま)、バックトゥフロント(前後逆)といったリバース(反転)のアイデアが満載だ。今シーズン他のブランドでも多く見られた逆再生技だったが、さすが御家芸ともいえるデザインには一番フィットした演出。不思議な安心感と共感を覚えた。