「トー横キッズ」なる言葉をよく聞くようになっている。2021年の「裏流行語」だそうだ。新宿・歌舞伎町の旧新宿コマ劇場跡地に建設されたゴジラヘッドが特徴的な新宿東宝ビルが完成した2018年頃からこの周辺に屯する若者を総称する言葉として使われ始めている。家出少女が群れをなし、薬物摂取、売春、自殺、暴力事件などが多発する危険地域になっている。当事者である東宝関係者は頭を抱えているだろうが、同時に「トー横」という言葉を聞くたびに東急東横線の関係者もなんとかこの裏流行語が消えてくれないかと願っているのではないだろうか。
文化的には裏の存在ではあっても、それに見合った「地雷系」とか「量産型」と言われるファッションがこのエリアのユニフォームになっているという。
それはさておき、この新宿東宝ビルからほど近い「新宿ミラノ座」跡地に大型複合施設「東急歌舞伎町タワー」(地下5階〜地上48階、延べ床面積約8万7400平方メートル)が2023年4月14日にオープンすることが正式に発表された。このエリアも昔からハメをはずした若者が噴水のある広場を中心に屯しているエリアだった。この広場ではブランド名は忘れてしまったが東京ファッションウィーク期間中にファッションショーを行ったブランドもあった。渋谷・原宿が若者文化の発信地として浮上するまでは、新宿がそうした若者文化の一大発信地だったのだが、どうしたものか70年代後半からは、そうした「裏」もしくは「影」の存在になってしまった。
この「東急歌舞伎町タワー」は、東急、東急レクリエーションとソニーミュージックエンタテインメントの共同出資会社であるTSTエンタテイメントが運営する。タワーの高さなどかなり前述した新宿東宝ビルを意識しているようだが、既に出店を公表していたホテル(「ベルスター東京」「ホテルグルーヴ新宿」は5月19日開業)、劇場「シアターミラノ座」、映画館「109シネマズプレミアム」、レストラン・バー、ライブホール「Zepp新宿」に加え、今回音楽などのナイトエンターテインメント施設「ZERO東京」の出店を発表した。「ZERO東京」は地下1階〜地上4階に入居する「Zepp新宿」の夜間時間帯を活用した施設として、地下4階〜地下2階に開設し、TSTエンタテイメントが運営する。
「東急歌舞伎町タワー」のトータルコンセプトは、「好きを極める場」だ。これを具体化する施策の第1弾がアニメ『エヴァンゲリオン』との協業による全館企画で2023年4月28日から順次スタート。『エヴァンゲリオン』の世界初の舞台劇や映画祭、歌手の高橋洋子のライブなどが予定されている。
「トー横キッズ」に荒らされた新宿歌舞伎町エリアの復権なるか、「東急歌舞伎町タワー」のオープン後を大いに注目したい。