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「2021年重大ニュース」その3:多発したMBO(経営者自社買収)の本当の理由は?

Dec 8, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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片倉工業が手掛ける「コクーンシティ」

業績の不振を立て直すために、株価や株主を気にせずにドラスティックな構造改革を行いたいという経営者によるTOB(take over bit:株式公開買い付け)=MBO(management buy-out)を行う企業が今年は例年になく多かった。

1.サカイオーベックス(本社福井市。染色加工業/東証一部)は松下伸太郎社長が設立した企業によるMBOが9月に成立。今後は染色加工などの東南アジアでの新規拠点の設立に加え、期待の新規分野である制御機器事業におけるM&Aなど事業構造改革に取り組む。今回のMBOは不成立に終わった2月のMBOに次いで株の買い取り価格をアップさせた2回目のもの。ただし筆頭株主で旧村上ファンド系投資会社のシティインデックスインプレスは保有する同社株式について今回のMBOには応募せずに今後経営支援を行うと表明。

2.オンリー(スーツなどの男女オーダー企業。東証一部。本社京都市):創業者中西浩一取締役相談役らによるMBOを行った。カジュアル化に加えて、コロナ禍のテレワークで市場縮小した結果、中長期的な観点から経営改革を進めるには非公開化が必要。MBO成立で上場廃止。

3.片倉工業:1873年創業の「シルクの片倉」と呼ばれた製糸業の名門ki企業(東証一部、本社東京)だが、現在の主力事業は不動産、医薬品、機械関連(消防自動車製造)で、繊維事業はインナーウェア、レッグウェア、エプロン、リラクシングウェア、機能性繊維などの製造。社員数は約140人だ。佐野公哉会長と上甲亮祐社長が折半出資する企業によるMBOを実施中。中長期的な視点で貫徹できる経営体制の早期構築が目的。買付期間は今年12月21日まで。MBO成立後は上場廃止する。

4.東京貴宝(本社東京。宝飾品総合商社。東証ジャスダック上場)は政木喜仁社長が設立した新会社によるMBOを実施中(買付締め切りは今年12月22日)。2018年に15年間経営トップに君臨した中川千秋社長(当時74歳)が臨時取締役会で解任。中川家のプライベートカンパニー3社が、東京貴宝が得るべき利益を付け替えていたのが理由。「ダイヤモンドオンライン」がインタビューした同社取締役によれば、東京貴宝クラスの企業でも上場に関わる費用や決算発表などで年間5000万円のコストがかかるという。

この他にも、ファッション&アパレル分野かどうかは微妙だが、イオンによる100円ショップ業界第3位のキャンドゥ(本社戸田市、東証一部)のTOBが現在進行中(第2回TOBの締め切り12月27日)だ。コロナ禍で新しい収益源を模索するイオンのTOBだ。TOB成立後もイオンはキャンドゥの上場を維持する考えだという。

こうしたTOBには、それぞれの事情がある。①上場廃止で買収の魔手から逃れられる。②上場維持費の節約という要因もあるが、MBOでは株主から株を買い取るための巨額の銀行借り入れが必要になる。ゼロ金利時代の今だからやれるという背景がある。③もちろん建前としての株価や株主に阿ることなく中長期的な観点から事業全体の構造改革ができるという理由もあるだろう。

また忘れてならないのは、来年4月4日(月)からスタートする東証の市場区分見直しがある。現在の第一部、第二部、マザーズ及びジャスダックの4つの市場区分が、プライム、スタンダード、グロースの3つに再編されるのだ。特に東証一部からプライム市場へはかなり厳しい上場維持条件が設けられている。現在の東証一部企業でもプライム市場に移行できないなら、「この際上場なんてやめてしまおう」という企業のMBO非上場化が今後ありそうだ。

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