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この映画は必見!「マックイーン:モードの反逆児」

Apr 3, 2019.久米川一郎Tokyo, JP
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©Salon Galahad Ltd 2018

4月5日(金)からドキュメンタリー映画「マックイーン:モードの反逆児」(111分)がいよいよTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開される。これはなかなか素晴らしいドキュメンタリー映画だ。昨年はヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)の半生を描いた「ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス」が公開されたが、その数段おもしろい。「おもしろい」という言い方は、行き詰まって首吊り自殺した人物に対して礼を欠くかもしれない。

想像していたよりも酷くはなかったが、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)は、父親がタクシードライバーでロンドンのイーストエンドに住む貧困家庭出身。しかし知的な母親が彼の人生を支えたのだと分かった。サヴィル・ロウのテイラーで働くことで、マックイーンのシンデレラストーリーが始まる。そして、『ヴォーグ(VOGUE)』の編集者だったイザベラ・ブロウ(Isabella Blow)に才能を見い出される。

2010年。マックイーン40歳。この母とイザベラ・ブロウが2人とも死んでしまい、自身はエイズを患っていて、しかも仕事に追われ、次第に枯渇していくアイデア。生来の躁うつ気質で麻薬にも侵されていて、これだけ重なるとこれは首吊ってもおかしくはない。事実、何度も自殺未遂していたらしい。こういうマックイーンが見続けていたダークサイドの幻影。このドキュメンタリー映画は、そのかなりの深淵まで踏み込んでいる。

ファッション業界関係者はマスト、そうでない一般の方にも是非勧めたい映画である。

それにしても、同時期にやはりシンデレラストーリーの主人公となったファッション・デザイナーにジョン・ガリアーノ(John Galliano)がいるが、彼の父親も配管工という下層階級。こういうロンドンの下層階級出身者が怒りの中から生み出すファッションの凄味というのは、独特のものがある。ヴィヴィアン・ウエストウッドが創始したパンク・ファッションも含め、ロンドンは本当に不思議な街である。

この映画の中では、最初「ジバンシィ(Givenchy)」のデザイナーに抜擢されたガリアーノが、「ディオール(Dior)」のアーティスティック・ディレクターに昇格した後に、マックイーンがガリアーノの後任として「ジバンシィ」のチーフデザイナーに27歳のときに抜擢されたわけだが、コレクションにかかる費用が「ディオール」のガリアーノは自分の4倍だと知って、嫉妬したというエピソードがこの映画では紹介されている。この嫉妬が後にLVMHを飛び出てグッチ・グループ(現ケリング)に移籍する遠因になったようだ。思い出してみれば、ガリアーノもその後、カフェで酔った上での暴言スキャンダルで「ディオール」をクビになったわけだが、デザイナーというのは、日々ストレスと不安と共生している商売なのだ。その辺で、親のスネかじって学芸会やってるお兄ちゃん、お姉ちゃんには分かるわけないだろうが。

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