
「スウォッチ(swatch)」は5月16日、高級時計ブランド「オーデマ ピゲ(Audemars Piguet、以下AP)」とのコラボレーションウォッチ「ロイヤルポップ(Royal Pop)」を発売する。
英国の「ガーディアン(Guardian)」紙をはじめ、国内大手日刊紙でも2面にわたる全面広告を連日展開しており、時計業界でも異例の大型プロモーションとして注目を集めている。中国市場の減速などから低迷していたスウォッチグループの株価も反応しており、4月11日に132.95スイス・フランまで下落していた株価は、5月8日に210.60スイス・フランまで上昇し、年初来高値を更新している。
現時点では価格を含む詳細は公表されていないものの、「ロイヤルポップ(Royal Pop)」の名称から、「AP」の最上位モデルで八角形ベゼルが特徴の「ロイヤルオーク(Royal Oak)」をベースに、「ポップ・スウォッチ(Pop Swatch)」の要素を融合させたモデルになる可能性が高いと見られている。
「ポップ・スウォッチ」は、1980〜90年代に若者文化を象徴したシリーズで、時計本体をストラップから外し、チャームやペンダントとしても楽しめる脱着式モジュールを採用していた。今回のコラボレーションでは、その仕様を「ロイヤルオーク」に掛け合わせることで、従来の高級時計とは異なる新たな文脈を打ち出す狙いがありそうだ。
「AP」は、「パテック フィリップ(Patek Philippe)」「ヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin)」と並び、時計界の「御三家(ホーリー・トリニティ)」の一角として知られる存在だ。これまで「スウォッチ」は、同グループ傘下の「オメガ(OMEGA)」「ブランパン(Blancpain)」とのコラボレーションを実現してきたが、独立経営を貫く「AP」との協業は、時計業界でも象徴的な出来事として受け止められている。
特に今回の全面広告展開は、単なるコラボレーションの宣伝を超えて、「スウォッチグループがAPを動かした」という存在感の誇示にも映る。ラグジュアリー市場の停滞感が漂う中、「スウォッチ」にとってはブランド価値を再び押し上げる大きな一手となりそうだ。
一方で、「AP」にとっては、一歩間違えれば高級時計としての希少性やブランド価値を損なうリスクもある。しかし、「オメガ」とのコラボレーションモデル「バイオセラミック ムーンスウォッチ(Bioceramic MoonSwatch)」は累計200万本以上を販売し、ブランド認知の拡大にも成功した。今回の協業も、新規顧客層や次世代の若年層を一気に取り込むための攻めの姿勢とも取れる。
「AP」は2026年1月、スイス・ジュラ山脈南端のル・ブラッシュに新製造拠点「アルク(Arc)」を開設。創業150周年プロジェクトの一環として、分散していた職人や専門技術者を集約し、次世代の時計製造体制を強化している。伝統を守りながらも、次世代の時計作りに向けた投資を加速している。
今回のラグジュアリーとポップカルチャーを融合させるコラボレーションは、「AP」にとって新たな転換点となるだけでなく、高級時計業界そのものの価値観を揺さぶる一手になるかもしれない。





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