欧米のファッション・ブランドや素材の輸入卸・販売の大手企業である三喜商事の創業者で取締役相談役の堀田一(ほりた はじめ)氏が8月26日に亡くなった。95歳だった。同社は1948年堀田商店として同氏が創業し、1956年に三喜商事を創業。黎明期の日本のファッション業界で、ヨーロッパの素材やファッションブランドを日本に輸入し販売した先駆的存在だった。
三喜商事は、インポーターと呼ばれる業界で長らくナンバーワン企業として君臨してきたが、すでにここ数年は年商が100億円を割り込んで90億円台で推移。ピーク時の90年代には、連結対象子会社のマックスマーラジャパンなどを連結した売上高は300億円を軽く突破していた超優良会社だった。この25年ほどで売り上げが3分の1になるという厳しさだ。一般に年商が3分の1になって生き残れる企業は稀だ。
今年3月18日に発表された2018年6月期決算公告では、純利益2億1700万円、利益剰余金359億4400万円、総資産364億600万円とある。儲かりはしないが、359億円の貯金があるということだ。故堀田相談役は三喜商事の将来を案じたまま黄泉の国へと旅立ったことになるが、今年だけでも様々な施策が打たれていたことも事実だ。
まず子会社のナイツブリッジを8月1日付で吸収合併した。同社は「ハロッズ(Harrods)」「ポール カ(PAULE KA)」「エリザ(ELISA)」などの取り扱いブランドが終了し、現在は「オールドイングランド(OLD ENGLAND)」のウィメンズのみであることから同ブランドのメンズを扱う本体の三喜商事との吸収合併が行われたもの。
それ以上に注目されたのが、イタリア食材などを輸入販売しているメモス(本社:大阪)の今年5月の買収。ファッションにとどまらないライフスタイル全般への事業拡大を新しい企業理念として同社は掲げ始めている。メモスの年商は25億円程度と見られる。
それにしても最近の動きを見るとナンバーワン企業の三喜商事の苦境は十分に伝わってくるのだが、この業界のコロネット、三崎商事、サン・フレール、東レディプロモードなどの企業でも苦しいのは同様だろう。インポーターではないが、セレクトショップを展開して、インポーターの草分けともいえるサンモトヤマも2017年に創業者の茂登山長市郎氏が亡くなっているが、状況は同じだ。長引く円安ユーロ高がジリジリと効いているのだろう。それより売れるのはラグジュアリー・ブランドばかりで、インポーターが手掛けるような個性派のブランドを買って差別化しようなんていうファッション感度の高い消費者はどんどん少なくなっているのだろう。そろそろこの厳寒期を耐えられない企業も出てきそうだ。