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伊藤忠は「リーボック」再構築パートナーになぜロコンドを選んだのか?

May 13, 2022.三浦彰Tokyo, JP
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既報(5月12日)の通り、伊藤忠商事は、米国オーセンティック・ブランズ・グループ(ABG)が保有する「リーボック(Reebok)」の日本における販売権およびマスターライセンス権を取得した。さらにロコンドとサブライセンス契約を結び「リーボック」の取り扱いに関する合弁会社(出資比率ロコンド66%、伊藤忠34%)を設立し、アディダスジャパンから国内事業を継承し、今年10月からこの合弁会社を通して販売を開始する。サブライセンシーのロコンドは、「リーボック」ブランドを冠したシューズのライセンス生産ができる権利を得ている。

今回の契約の背景を説明しておく。まずアディダスは、ナイキへの対抗策として2006年にリーボック社(本社:米国・ボストン)を買収したが、その後業績不振が続き、アディダスは2022年第1四半期(1〜3月)中に最大21億ユーロ(2850億円、1ユーロ=135円)で、「リーボック」をABGに買収すると発表していた。売却が無事に済んで各国での新しいビジネスの枠組みが決まっており、日本での今回の発表もそうした流れに沿ったものだ。ABG傘下には、「バーニーズニューヨーク(Barneys New York)」、「フォーエバー21(FOREVER21)」「ブルックスブラザーズ(Brooks Brothers)」「エディー・バウアー(Eddie Bauer)」に加えて2021年6月には、「カルバン クライン」と「トミー ヒルフィガー」に集中する意向のPVH社の「IZOD」「Van Heusen」「ARROW」「Geoffrey Beene」の買収を発表するなど保有ブランドを増やしている。

ABGはヨーロッパでは、EC企業のファーフェッチの子会社であるニューガーズグループ(New Guards Group、以下NGG)と提携することを2月23日に発表している。NGGは「オフホワイト(OFF WHITE)」や「ヘロンプレストン(Heron Preston)」などのブランドを保有している。NGGによって低迷していた「リーボック」が一気にスニーカービジネスの表舞台に返り咲くことも可能だとみられている。

日本でマスターライセンサーの伊藤忠がパートナーに選んだのは靴のEC企業として注目を集めているロコンド。2021年2月期に上場以来初の黒字決算を出したものの、2022年2月期では黒字ではあったものの減収減益決算に終わって、株主たちを失望させ4000円目前だった株価も1000円を割り込む水準まで下がったが、このニュースで1000円台に復活している。

傘下にデサントというスポーツ関連企業を擁している伊藤忠が、なぜ今回「リーボック」ビジネスパートナーにロコンドを選んだのか。ヨーロッパでABG&NGG(ファーフェッチ傘下)によるビジネス再構築が進められているのに対応して、ECによる靴ビジネスに強いロコンドに白羽の矢が立って指名されたようだ。現在の日本での「リーボック」のビジネスは小売価格で100億円程度だが、2028年中にライセンス商品も含めその倍の200億円を目指すという。伊藤忠は4月にも日本での「アンダーアーマー」ビジネスを手掛けるドームの買収を発表するなどスポーツ分野での投資を積極化しているのにも注目しておきたい。

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