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Global|ラガーフェルド死去。「傭兵デザイナー」のひな形つくる

Feb 21, 2019.橋本雅彦Tokyo, JP
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デザイナーのカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)が2月19日にパリの病院で亡くなった。85歳だった。1月のパリ・オートクチュール週間で、彼がチーフデザイナーを務める「シャネル(CHANEL)」のショーのフィナーレに登場しなかったために、健康状態が心配されていたが、危惧が現実のものになった。チーフデザイナーを務めるもうひとつのブランド「フェンディ(FENDI)」の2019-20年秋冬プレコレクションの準備に入っていたようなので急な逝去だったようだ。ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani、1934年7月11日生まれ)と並んで、ヨーロッパ・ファッションの2大長老だったが、まさに巨星墜つという逝去で、ひとつの時代が終わった感が強い。

カールが、「シャネル」を手掛けるようになったのは1983年だが、すぐに低迷していた「シャネル」をファッションのメインストリームに復帰させ、それ以降実に36年にわたって、「シャネルのカール・ラガーフェルド」としてファッション界に君臨し続けた。すでにカールは、1965年からローマに拠点をおく「フェンディ」のウィメンズ・プレタポルテのデザイナーとしても活動していた。カールは、ことあるごとに「私は傭兵デザイナーだ」と自嘲気味に語っていた。カールは、もちろん「カール ラガーフェルド(KARL LAGERFELD)」という自身のブランドもデザインはしていたが、現在ではライセンスブランドとして命脈を保つばかりだった。

ファッションの歴史の中で、カールが特筆されるのは、こうした「傭兵デザイナー」のひな形を作ったということだろう。つまりブランドの創業デザイナーのDNAを継承しながら、それに現代の息吹を吹き込むという作法を確立したデザイナーだった。これは、90年代に入って、トム・フォード(Tom Ford)をクリエイティブ・ディレクターに起用(94年)した「グッチ(GUCCI)」、マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)をアーティスティック・ディレクターに起用(97年)した「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)をアーティスティック・ディレクターに起用(96年)した「ディオール(DIOR)」に引き継がれることになる。

そのブランドが長年培ってきたDNAとは、例えばそのアーカイブや顧客注文帳ということになるが、それにカジュアルな感覚やストリート感覚を加えて現代によみがえらせるという手法は、LVMHやケリングが得意とする「ラグジュアリー・ブランド」のブランディングの核心である。こうした手法で例えば、LVMHを現在率いるベルナール・アルノー(Bernard Arnault)は、1984年にクリスチャン・ディオール社を買収し、1989年に「ルイ・ヴィトン」を買収するなどして、今や年商5兆円企業にまで成長した。そうした「ラグジュアリー・ブランド」のメソッドを編み出したのは1983年に「シャネル」のデザイナーになったカール・ラガーフェルドなのだ。現在「ルイ・ヴィトン」のアーティスティック・ディレクターを務めているニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)は、LVMHの許可と支援を得て遅ればせながら自身のブランドを始めると最近報道されたが、まさに典型的な「傭兵デザイナー」ということができるだろう。新進デザイナーたちの夢は、自分のブランドを立ち上げて成功することではなく、ビッグブランドのクリエイティブ・ディレクターになって大金を得ることになってしまったと言われるほどである。このあたりがカールの功罪かもしれない。

カールの後継として、シャネル社はいち早く、同社のクリエイティブ・スタジオ・ディレクターのヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)を指名した。前述したカール不在の「シャネル」のオートクチュールのショーでカールの代理としてフィナーレに登場した女性だ。彼女がワンポイントリリーフかどうかは不明だが、クリエイティブ・ディレクター方式というのは基本的にスター・デザイナーを起用してセンセーショナルな話題作りが基本だけに、「シャネル」としてもカールを承継する本命の候補者はいるはずだ。なんといっても「シャネル」のチーフ・デザイナーは、デザイナーのキャリアの頂点であるだけにデザイナーなら誰しも興味のあるポストだ。たぶんアルベール・エルバス(Alber Elbaz)とジャン=ポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)のいずれかだと思う。「シャネル」ブランドはいまや国家的存在だけに、フランス人であることが求められるはずだからだ。

いずれにしても、36年にわたって「モードマスター」としてファッション界を牽引して来たカールの死で、その混沌はますます深まりそうだ。

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