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こんな状況なのになぜ日経平均株価は上がるのか?

Sep 12, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
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安倍晋三総理大臣が退任する。2012年12月から実に7年9カ月に及ぶ第2次安倍内閣の最大の功績は、就任当時約1万円だった日経平均株価が現在2万3000円程になったこと。約2.3倍の上昇である。もし日経平均採用の225銘柄で構成される投資信託があったならば、1000万円は2300万円になったし、1億円は2億3000万円になったということだ。「凄いだろう」と安倍総理の側近は強調するが、そんな株投資もできない「庶民」にとっては「全く景気回復の実感は湧かない」のだ。失業率についても、2012年の4.3%から今年7月の完全失業率は2.5%と飛躍的な改善を見せている。この失業率については、非正規労働者が増えただけという反論がある。安倍晋三は小泉純一郎&竹中平蔵が始めた構造改革の継承者であったのだ。株上昇について、ここでは論じることにしよう。「コロナ禍が進んでいるのに日経平均はなぜ2万3000円台をキープしているのか」という疑問を投げかけて来る人々が多いのだ。

日経平均は今年1月20日に2万4083円という高値を記録したが、その後3月に入り新型コロナウイルスが本格化した2月20日あたりから急落し、3月19日には年初来安値1万6552円を記録した。高値から安値までほぼ32%の下落である。今にして思えば、よくその程度で踏みとどまったなという印象だ。いわゆる「売り方」は、もっと下がると思って「カラ売り」(株は買うばかりでなく、売ることもできる。例えば、200円の時にカラ売りをして100円の時に買い戻せば100円で買って200円で売ったことになり、利益が出る)をかけていたのではないだろうか。「この調子なら、2万4000円の半値まで下がるのは間違いない」という読みが多かったはずである。しかしこの「売り方」を上回るものスゴい買い手がいたのである。それは、GPIF(日本年金積立金管理運用独立行政法人)と日本銀行(日銀)である。GPIFは公的年金の25%までを国内株式で運用していると言われ、運用資金はトータルで150兆円以上。そのうち38兆円ほどが日本の株式市場で「買い方」に回っているという。日銀はETF(上場投資信託)と呼ばれる金融資産の買い入れを行うことで日本株を購入し続けている。ETFは、日経平均採用の225銘柄やTOPIX(東証株価指数)をメインに構成されている。2020年3月31日現在で日本銀行の保有ETFの総額は31兆円(時価)で、10%以上の株式を保有する企業数は56社に上る。日銀は日本の上場企業にとって最大の株主ということができるのである。こんなコロナによる史上最大の困難なのだから、「株はもっと下がるはず」だと考えて、上場株の「カラ売り」などをしていると、GPIFと日銀の買いに阻まれて、大変なヤケドを負うことになるので、慎重にやられた方がいい。カラ売りは半年以内に買い戻さなければならないから、3月19日あたりに「カラ売り」をした者が9月19日には買い戻し期日を迎えるから、ここ1週間はたぶん値上がりしていくのではないだろうか。

いずれにしても「庶民」の景況感とはかけ離れた話である。日本の上場企業は約4000社であるが、これは日本の全企業約400万社の0.1%に過ぎない。「株価が2.3%になったろう」と言われても、それは全体の0.1%、つまり1000社に1社の話である。「庶民」の景況感とはかけ離れたものであるのも当然である。上場企業は、この苦しい1年間をなんとかヤリクリすれば、明るい太陽が雲の間から見えると思っているはずだが、非上場企業の多くは、その1年でバタバタと倒れていくのであろう。安倍第2次内閣の7年9カ月は大企業優先の政策と言われるのはそうしたことである。

しかし、GPIFも日銀も買い支えしきれないような株価の暴落は必ず来ると予言しておこう。それがいつと確言できないのは残念だが、9月19日から年内にやって来るのではないだろう。新型コロナウイルスの寒冷期に入っての再拡大なのか、全く違った内部要因なのかは分からないが、必ず来るとだけ申し上げておこう。巨大資金を保有するGPIFも日銀も資金には限界がある。

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