5月15日、アパレル大手のレナウンが法的整理手続きに入った。東証1部上場のかつての名門は、2010年に中国の繊維会社大手の山東如意科技集団(以下、山東如意)から約40億円(当時の中国元で3.1億元)の出資を受けて傘下に入ったが、最後は同グループ企業(香港の恒成国際)からの売掛金53億2400万円が回収できず、さらに新型コロナウイルスによる追い打ちで万策が尽きた。最盛期には3000億円を計上した売上高も、2019年12月期には502億円まで減少していた。負債総額は約138億円だった。
今回のレナウンの経営破綻で明らかになったのが、山東如意の苦境だ。「中国のLVMH」とも称される山東如意は、レナウンの筆頭株主になって以降、「アクアスキュータム(Aquascutum)」「バリー(Bally)」「ライクラ(Lycra)」といった海外ブランドを次々と買収していった。現在までに20社近いブランドを傘下におさめ、81の国・地域に約6000店舗を展開している。2018年に「ランバン(LANVIN)」を買収した中国・上海の復星国際、2017年に「カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)」の中国事業を買収した中国·福建の七匹狼などと合わせて、「買収マニア」とも呼ばれている。
この「買収マニア」の山東如意が資金難に陥っている。山東如意の年次報告書によると、昨年6月時点での有利子負債は約317億元(4755億円*)だ。レナウンへ売掛金の支払いが滞った恒成国際は、親会社の山東如意が連帯保証社になっており、本来であれば山東如意がレナウンに払うべきだが、多くのブランド買収で膨れ上がった債務のために、レナウンを救済する余裕などなかったわけだ。否、そもそもアパレルメーカーのレナウンが恒成国際に販売したものが羊毛、綿花、綿糸、テキスタイルなどの原料だったというから、この取引自体も不可解だった。今年3月、当時の神保佳幸レナウン社長は、「当社には、親会社の山東如意から派遣されているメンバーもおり、取締役全員でこの売掛金の回収を解決する」とコメントしていたが、結局は果たすことができなかった。