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Japan|レナウン倒産の本当の理由

May 22, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
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遂に大手アパレルメーカーのレナウンが5月15日に倒産した。名誉を重んじたのか最後の悪あがきなのかどうか、子会社のレナウンエージェンシーが債権者としてレナウンの民事再生法適用を申請するという往生際の悪さだった。新型コロナウイルスによる売り上げ減で資金繰りに行き詰まったとされるが、今回の「コロナ・パンデミック」がなかったとしても、倒産は時間の問題だった。

今回意外だったのは、「レナウン」という名前の知名度の高さだった。1902年創業の同社は、最初佐々木商会という社名だった。が、1922年に英国皇太子が来日した際の巡洋艦レナウンをブランドや社名に使ってから、そのカタカナの響きが支持されてきたようだ。

1970年代、80年代には日本のアパレル業界で圧倒的なナンバーワン企業になった。小林亜星によるCMソング「レナウン娘」、「イエイエ」、「ワンサカ娘」などが大ヒットして、「レナウン」の名はいまだに消費者の脳裏にこびりついていたという寸法である。しかし、そもそもがニットウェアやカットソーを主力にするニットウェアメーカーだったために、その企画力はシンプルなものが多かった。日本のアパレル市場が急拡大する70年代、80年代にCMと大量生産に適していたニットやカットソーが主力商材だったために、百貨店の売り場を「埋める」ことにかけては、同社に勝てる企業は見当たらなかった。同業のオンワード樫山、三陽商会、東京スタイル(サンエーインターナショナルと合併してTSIホールディングスになる)などが、布帛をメインにした重衣料中心のアパレルメーカーだったために、単純なアソート力が求められた70年代、80年代前半はレナウンの後塵を拝していたのである。しかし、その企画力の単調さは次第に問題化してくる。加えて、80年代に稲川博通氏(1930〜1991年)が社長に君臨して余資運用に手腕を発揮して、経常利益の半分が営業外利益という企業体質を作ってしまった。これが本来の企画力の弱さに拍車をかけることになった。レナウンはプライドだけが高くて、過去の栄光にあぐらをかいた社員ばかりがいる企画力のないアパレルメーカーになってしまった。そういえば1992年に伊藤忠の仲介でレナウンが契約したJ.クルー(最近倒産した)の原宿店(現在ソフトバンクがある場所)がオープンした初日の売り上げが、10万円に届かなかったのが業界で話題になった。社員が誰一人として買わなかったのであろう。無理矢理でも社員に買わせて売り上げを作るものだが、プライドが高いからそんなこともしなかったのである。その噂を聞いてレナウンはいずれダメになるだろうと言われたものである。1990年にバブル経済が崩壊して、日本経済に空白の30年がやってきた。1990年代に入ると、百貨店をメインチャネルにした大手アパレルメーカーに苦難の時代が到来したのは周知の通りである。

よく考えてみれば、レナウンはこの30年間をよく生き抜けたものである。むしろ別会社としてスピンアウトした別会社のダーバンやレリアン、レナウンルック(現ルック)の方がまだ市場では善戦している。アラン・ドロンをTVCFに起用した「ダーバン(D'URBAN)」やキャンパスブランドとして一世を風靡した「イクシーズ(IXI:Z)」(すでにブランド閉鎖)を生んだダーバン、独自の中高年ショップブランドの道を歩んで成功したレリアン、いまや海外ブランドのインポーターに変身したルックなどはまだ生き残りの可能性を残している。ちなみにスピンオフしたダーバンは、レナウン本体に戻っている。

レナウンはこの30年間に、スポンサーとして日本の投資ファンドのカレイド・ホールディングスから2005年に100億円出資を受けた。カレイド・ホールディングスは福助の再建の成功で味をしめての出資だった。しかし成果を出せずカレイド・ホールディングスは3年で撤退。その時川島隆明カレイド・ホールディングス代表は「もうアパレル企業はコリゴリ」の捨て台詞を残している。同社に代わって登場したのは、中国の繊維大手企業の山東如意科技集団だった。2013年に追加出資でレナウンを完全子会社化している。今回の倒産はこの山東如意に見捨てられた結果である。コロナにやられて山東如意もかなり経営が厳しそうである。

レナウンはすでに整理ポスト入りしていて、株価は28円(5月22日終値)、上場廃止になる予定だ。新たなスポンサーを探しているというが、少なくともファッション&アパレル業界にはいないだろう。経営資源というものが見当たらないし、各社は自分のことで精一杯なのである。

それよりも、日本アパレル・ファッション産業協会の理事長を務める北畑稔・レナウン顧問(前会長)はどうするのだろう。レナウンは中国企業だし、自社の危機的な状況を考えれば固辞すべきポストであったにもかかわらず、理事長職を引き受けてしまった。前述したプライドの高さゆえなのだろうが、倒産企業の責任者をトップに就かせてしまう日本アパレル・ファッション産業協会というのはどういう団体なのだろうか。日本のアパレル業界はお先真っ暗だ。

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