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インタビュー後編:化粧品業界に第3の軸を!世界観貫き躍進する「スック」の海外戦略

May 21, 2018.セブツー編集部Tokyo, JP
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3月にリニューアルしたセルフリッジのSUQQUカウンター

ー 今後はどの地域への出店を考えていますか?直営店の出店は予定していますか?

「今はイギリス、台湾、韓国の免税店とタイに店舗があって、将来的にはヨーロッパの大陸への進出を検討している。その後は中国、アメリカも視野に入れて拠点を拡大していきたいが、ただ売り上げの拡大を優先するよりは、1つひとつの拠点の存在感を高めていくという戦略が1番良いだろう。ビジネス的にはスピード感が足りないと思われるかもしれないが、パッと広げるよりは積み重ねることで大切にブランドを作り上げていきたい。国内に路面店は出したいと思っているが、具体的なことはまだ決まっていない。ブランドの世界観を表現するという意味ではベストな方法だと思うので近い将来実現したい。」

ー 免税店や越境ECなどでの販売チャネル拡大は計画していますか?

「免税店をも含めて今後も広げていく方向なのは間違いない。ただ既存で出ているローカルの店舗が一番大事というのは変わらず、価格だけに焦点が当たるよりは世界観をトータルで理解してもらえるような顧客づくりが大切。越境ECはそう遠くない未来にやる予定がある。SNSでの販売などそこまでのオムニチャネル化はできていないが、グローバルシッピングをしているセルフリッジやハロッズのECでの販売が好調で、どこまでチャネルを広げるかは課題でもある。」

ー ASEANもポテンシャルの高い市場ですが、タイの店舗の動きを教えてください。

「タイの店舗は現在の台湾やイギリスの動きに比べるとまだ鈍く、テコ入れが必要と感じている。東アジアと東南アジアは近いようで、化粧習慣や気候、肌の色が違う。タイの方に合うような色合いを提供できているのかは課題だ。今国際チームの方でタイについては別の戦略を練っていて、タイを起点に東南アジアでのブランドの見え方が変わって来るような仕掛けをしていくので期待して欲しい」

ー J-Beautyブームをどのように捉えていますか?

「J-BeautyはいわゆるK-Beautyがあってその後にブームが来たというような書かれ方をしている記事が多いが、我々はJ-Beautyブームを落ち着いて捉え、浮き足立つことなくこれまでやってきたことを確実にやり続けようと思っている。ブームはポジティブに受け止めているが、ありがたいチャンスがやってきた程度の感覚だ。しかし欧米の方が韓国と日本の違いがわかるようになってきたのは大きな変化で、ダイバーシティという世の中の流れもあって、真の東洋の美しさという自分たちが本当に訴求したいことが伝えられる機は熟しているように感じている。J-Beautyに関する記事を見るとスキンケアに偏重しているものが多いが、『SUQQU』はメイクの方でもJ-Beautyを確立していきたい。K-Beautyは特定の成分のインパクトなど、どちらかというとキャッチーなスキンケア製品が多く、西洋は発色の良いカラーアイテムが中心。我々はまぶたが濡れたように見えるパールの使い方や、和名をつけ1色ずつ意味を込めて作り上げる繊細な色合いなど、質感や色彩をとても大事にしていてそれが魅力でもあるので、J-Beautyといったときにスキンケアの技術革新だけではなく、日本人の感性で生み出していく豊かな美意識にも注目してもらえるよう発信していく」

ー 和名をつけていることがメイクでも注目を集めていることに影響していると感じますか?

「和名にはこだわっていて、ブランド設立当初は日本の伝統色から、現在は新たにクリエイトした色の表現を和名に込めている。○○番といった番号やピンク、ローズといった既存の色名ではなく、あえて和名を用いることで意味合いが生まれ、色ごとにキャラクターが確立されているというメリットもあるので、和名は武器の一つと捉えている。欧米でも和名をそのまま使用していて、ローカルのスタッフも名前やこだわりを良く理解している。」

ー 今後世界で名の知られている日本人や日本文化とのコラボレーションは考えていますか?

「今のところモデルについては、西洋の方がイメージするアジア人像ではなく、我々にとって美しいと思える人物を採用していく。日本文化とのコラボレーションは考えられないことはないが、『SUQQU』は日本ブランドだが仕上がりはあくまでモダンに、ということにこだわっていて、極端に和の方向にいくことは避けている。強いモード感を持っていきたいので、伝統を重んじながらも進化を続けているようなものであれば親和性は高いかもしれない。『SUQQU』のパッケージは吉岡徳仁氏がデザイン監修をしているが、ビューティに関わらず海外で成功している日本のブランドや製品というのは必ずしも日本を前面に押し出していない。我々も欧米人の部分的なアジア趣味を満たすものではなく、彼らの生活の中に根づいていけるものを展開していき、未知なる旬を目指していきたい」

ー 今月行われる国際百貨店協会(IGDS)のサミットで、J-Beauty代表としてパネルディスカッションに参加することになったきっかけを教えてください。

「今年のサミットの主幹事がセルフリッジで、パネルディスカッションへの参加は彼らからのリクエストだった。セルフリッジのオックスフォード店は一番大きい旗艦店で、今年『SUQQU』のカウンターをリニューアルして売り場面積は40㎡と以前の3倍ほどになった。現在同店のコスメのメインフロアにある日本ブランドは『SUQQU』のみで、リニューアル後に発売したサマーコレクションが初日でかなりの売り上げを記録した。そういったことが今回リクエストを受けた背景にあるのだろう。他店からも売り場スペース拡大の声は掛かっている」

J-Beautyは永遠に続くトレンドではない。数年後ブランドの真価が問われたとき残っているのは、軸を変えず、地域に合った形で世界観を浸透させていく「SUQQU」のようなブランドだろう。業界に第3の軸を築くことはできるのか、「SUQQU」が描く世界地図に今後も期待したい。

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