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「サカイ」と「カルティエ」のコラボにみるリシュモンの深謀遠慮?

Feb 25, 2022.三浦彰Tokyo, JP
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「サカイ」2021年秋冬コレクションから

日本人というのは、まず先に海外で認められた自国の人物に対しては辛い評価をする傾向があるようだ。この「サカイ(sacai)」のデザイナーの阿部千登勢(56歳)もその一人ではないだろうか。パリ・コレクションにおいては、「コム デ ギャルソン(COMME de GARÇONS)」「ヨウジ ヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」に匹敵する存在になりつつあるというのに、日本ではそこまで評価されているわけではないだろう。

それはともかく、その阿部千登勢が、「カルティエ(Cartier)」のアイコンのひとつとも言える「トリニティ」の6モデルからなる限定コレクション「TRINITY FOR CHITOSE ABE of sacai」を発表する。コラボばやりの最近だが、LVMH、ケリングと並んで3大ラグジュアリーグループのひとつであるリシュモン・グループの屋台骨を支える最大ブランド「カルティエ」との今回のコラボは、コラボ料稼ぎの一般コラボとは違って、彼女の今後につながる布石になるかもしれない重要なプロジェクトに思える。リシュモン・グループは故アルベール・エルバスを起用して「AZファクトリー」をスタートさせた。2021年4月24日のエルバスの急死(享年59)によって、「AZファクトリー」は休止することになりそうだが、ここで重要なのはリシュモン・グループが、「クロエ(CHLOE)」に加えてファッション&レザーグッズの分野で本格的なブランドをさらに持ちたい意向があるということだ。今回の「サカイ」と「カルティエ」のコラボには実はそうしたリシュモンの深謀遠慮が隠されているというのは穿ち過ぎだろうか。その本格的な関係の端緒になる可能性がないとは言えないだろう。

恐らく1億〜2億円程度の年間契約料で数々のブランドからデザイナー就任依頼が阿部千登勢の元には来ていると思う。ラグジュアリーブランドからのクリエイティブ・ディレクター就任依頼ともなれば、契約料はその倍だろう。

現在「サカイ」はウィメンズウェア、メンズウェアの年4回のコレクションを行なっており、これに加えて、他のブランドの仕事をする時間や余裕があるのかどうかということが最大の問題だろう。それで命を縮めてしまっては元も子もない。いわゆるラグジュアリーブランドのクリエイティブ・ディレクター=「傭兵」になるということが自分にとって果たして意味のあることなのかどうかを阿部千登勢は常に考えているはずだ。

それが難しいのなら「サカイ」自体がラグジュアリーブランドに匹敵する存在に上り詰めればいいのだ。それには、ハンドバッグとジュエリーとシューズの充実が求められるだろう。またそれを阿部千登勢本人が一から十まで手掛ける必要はない。優れたチームをそれぞれ作り上げればいいのだ。しかし、これをデザイナー企業が手掛けるのは大変なことだろう。何よりも資金が必要になる。今度はスポンサーが必要になるだろう。「サカイ」が今からもう一段上の存在になろうとすれば、それはそれで並大抵のことではないのだ。そんなことを考えると、もう56歳の阿部千登勢にとって、今回の「カルティエ」とのコラボはターニングポイントになる可能性がないとも言えない。何かが起こるかどうか、注視しているのだが。

 

 

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