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新クリエイティブ・ディレクターを発表した「フェラガモ」と「ミッソーニ」の現在はどうなっている?

Mar 22, 2022.三浦彰Tokyo,JP
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©Nacasa & Partners

8兆円の年商を誇るラグジュアリービジネスのナンバーワン企業LVMHが「グッチ(GUCCI)」を買収しようとして、1990年代後半にグッチ社と激しい抗争を繰り広げたことを知らない方も多くなったと思う。イタリアのラグジュアリーブランド保有に対するLVMHの熱意は「フェンディ(FENDI)」「ブルガリ(BVLGARI)」「ロロ・ピアーナ(Loro Piana)」「エトロ(ETRO)」を買収して傘下に保有していることからも分かる。そうしたLVMHが表面的には買収に動いていないと思われている独立系ラグジュアリーブランド企業が、サルヴァトーレ フェラガモ(Salvatore Ferragamo)(2011年ミラノ証券取引所上場)とミッソーニ(Missoni )(未上場)の2社だ。 

この2社は、LVMHのブランドやケリングのブランドに比べると、仕掛けもあまり多くなく、地味な歩みを続けているようだ。その2社で最近クリエイティブ・ディレクターの変更というビッグニュース があった。

まずサルヴァトーレフェラガモ社は、2021年5月に退任していたポール・アンドリュー(Paul Andrew)に代わって、マクシミリアン・デイヴィス(Maximilian Davis)が3月16日付で新クリエイティブ・ディレクターに就任すると発表した。デイヴィスは英国マンチェスター生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、2020年に自身のブランド「マクシミリアン(MAXIMILIAN)」でデビューしたばかりの新進デザイナーである。ボディコンシャスなUネックの黒のジャンプスーツなどが印象的だった。両親はジャマイカとトリニダード・トバゴ出身で、そのクリエイションはそのオリジンを発想源にしているようだ。フェラガモ社のマルコ・ゴベッティ(Marco Gobbetti)CEO(最高経営責任者)は、「ミレニアム世代の中で最も輝かしい才能の一人」とその才能を 絶賛しているが、デビューしたばかりのデザイナーであり、かなり大胆な抜擢とも言える。フランコ・モスキーノ(Franco Moschino)のビジネスパートナーとして本格的なキャリアをスタートし、モスキーノが逝った後は、低迷していた「ジバンシィ(GIVENCHY)」にリッカルド・ティッシ( Riccardo Tisci)をスカウトしてブレイクさせ、その後LVMHのグループ内人事で「セリーヌ( CELINE)」のCEOに転じ、「クロエ(Chloe)」からフィビー・ファイロ(Phoebe Philo)をスカウトして これも大ブレイクさせ、その後は「バーバリー(Burberry)」CEOに転じ、ティッシをクリエイティブ・ディレクターにスカウトし、同ブランドのラグジュアリーブランドとしての基盤を作った。2021年末で「バーバリー」を退任し、「生まれた故郷のイタリアに戻りたい」と「フェラガモ」に転じている。要するにデザイナーを見る眼に長け、デザイナーのクリエイションをベース にしたラグジュアリーブランドの構築ではこの業界随一の仕事人なのだ。そのゴベッティが選んだのが、マクシミリアン・ デイヴィスという新進デザイナーなのだ。これは注目せざるを得ないだろう。初コレクションは大注目だ。 

一方、「ミッソーニ」が選んだクリエイティブ・ディレクターはイタリア人デザイナーのフィリッポ・グラツィオーリ(Filippo Grazioli)だ。3月17日に発表があった。1981年生まれで、「メゾン マルジェラ (MaisonMargiela)」「エルメス(HERMES)」「ジバンシィ」を経て、2020年まで「バーバリー」のランウェイコレクションのディレクターを務めていた。前述のゴベッティとは「ジバンシィ」 「バーバリー」でキャリアがダブっている。ミッソー二社のリヴィオ・プローニ(Livio Proli)CEOは、「創業者ファミリーとわが社に投資する投資会社のFSIの合意で彼を任命した」と語る。グラツィオーリの前任者はアルベルト・カリーリ(Arberto Caliri)であるが、カリーリは創業デザイナーのひとりであるロジータ・ミッソーニ(Rosita Missoni)の監督のもと、ホーム・コレクション「ミッソー 二・ホーム」のデザインを行うことになった。またカリーリは、「ミッソーニ・スポーツ」のデザインも行う。カリーリは、それ以前には「ミッソー二」ブランド全般のクリエイティブ・ディレクターを務め昨年退任した創業者デザイナー夫婦オッタヴィオ&ロジータ・ミッソー二の長女であるアンジェラ・ミッソー二(Angela Missoni)のアシスタントデザイナーだった。グラツィオーリは5月末に発表される2023年春夏ウィメンズ・プレコレクションが最初のコレクション発表になり、最初のコレクション・ショーは9月のミラノ・ファッションウィークになる予定だ。

同社のプローリCEOの言葉に出てくるFSI(Fondo Strategico Italiano)はイタリアの政府系ファンドで、2018年にミッソー二社の株の41.2%を取得しているが、ミッソーニファミリーが依然過半数株式を保有している。注目したいのは、FSIにはサルヴァトーレフェラガモ社の前CEOだったミケーレ・ノルサ( Michele Norsa、フェラガモではCEOを退任後はExecutive Deputy Chairman of Boardの肩書だったが昨年12月に退社)が参画しており、ノルサはミッソー二社副会長職に就任している。独立系のイタリアンラグジュアリーブランドの大物2大ブランド「フェラガモ」「ミッソーニ」がいろいろとつながりを深めているのがわかる。

いずれにしても、新クリエイティブ・ディレクターを迎えて、この2ブランドがどう変わっていくのか注目される。

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