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三陽商会の「羊頭狗肉」と「弥縫策」

Apr 1, 2019.久米川一郎Tokyo, JP
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2015年春物を最後に主力ブランド「バーバリー(Burberry)」とのライセンス契約を終了して、苦闘する三陽商会が、またまたどうでもいい「施策」を行った。今回は現在の12月決算を2月決算に変更するというもの。理由は「ファッションを扱う事業を主体とする当社にとって、春夏・秋冬というシーズン性の高い事業運営と決算期を一致させることが合理的と判断」というもの。わかったような、わからないような理由だ。上場会社であるから、百貨店に納品するだけして売り上げを上げて、決算期を過ぎたら百貨店から返品の山みたいな前時代的な決算をしているわけでもあるまい。月次ペースできちんとまとめているはずで、いつ区切っても問題はないはずだ。メリットとしては次の決算は2019年1月1日から2020年2月29日までの変則14カ月決算になるので、事情を知らない人間が勘違いしてくれるということがあるかもしれない。こういうのを「羊頭狗肉」という。「羊頭狗肉」といえば、三陽商会は2017年7月1日に10株を1株に併合している。当然のことながら単純に考えて、株価は10倍になる。現在三陽商会の株価は、1748円(3月27日終値)。素人目には「あれ、意外に高いんだ」ということになるが、これは株式併合のマジックに過ぎず、従来であれば174.8円。なかなかに厳しい株価である。まさか経営陣に、業績不振をなんとか隠そうという不純な動機はないだろうが、羊頭狗肉と言われても仕方のない数字のマジックである。

三陽商会は今年に入ってから、2013年に230人の早期退職者を出した責任をとって、代表取締役会長を辞任して相談役に退いていた中瀬雅通氏を、6年ぶりに会長(代表権はない)に復帰させた。周知のように中瀬氏は、創業者の吉原信之氏の娘婿。「ファミリー経営からの脱却が日本の大手アパレルにとっては大きな課題であるだけに、単に人材がいないということでは済まされない」という異論も多かった。

とにかく「羊頭狗肉」だろうが、弥縫策だろうが、なんでもいい、定価販売できるちゃんとした商品を作り、売り上げを伸ばして、利益を上げる。これがきちんとできるならば、決算月を変更しようが、株式を併合しようが、一度辞めた創業ファミリーの人間を復活させようが、好きにしてください。三陽商会よ、もう時間はない。どうでもいい「改革」や「施策」をやっている暇はない。

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