
ワールド、良品計画、電通グループ。上場企業の間で、「重たい資産を持たない経営」への転換が鮮明になっている。象徴的なのが、本社ビルや自社不動産の売却だ。かつては信用力の証とされた不動産保有が、いまでは経営の柔軟性を阻む要因と見なされ始めている。
ワールドは1月7日、神戸市に構える本社ビルの売却を発表した。アパレル企業にとって、本社ビルや自社不動産は「企業の格」を示す存在だった。しかし、需要変動の激化やブランド寿命の短期化が進む中、その価値観は明確に変わりつつある。ワールドは創業の地である神戸との関係を維持するとしており、拠点を捨てるのではなく、「持ち方を変える」判断といえる。
同様の動きは良品計画にも見られる。同社は東京都豊島区東池袋に置いていた本社を文京区飯田橋へ移転し、旧社屋を売却した。1989年の設立以来、豊島区と連携して池袋の街づくりにも関わってきたが、資本効率を高め、意思決定を迅速化するための選択を優先した。もともと「余計なものを持たない」思想を掲げてきた同社にとって、極めて一貫性のある判断だ。
電通グループも不動産の整理を進めている。汐留本社ビルの売却に続き、2025年末には東京・銀座7丁目に所有する「電通銀座ビル」の売却を発表した。キャピタルアロケーション(資本配分)を最適化するための資金確保に加え、修繕費や固定資産税といった維持コストを抑制する狙いがある。
業態は異なるが、共通するのは「重たい資産を抱えたままでは次の一手が遅れる」という危機感だ。不動産は長らく「安定の象徴」とされてきたが、いま企業に求められているのは規模ではなく、変化への耐性である。
不動産を手放すことは、衰退の兆しではない。むしろ、環境変化に適応し続けるために選ばれ始めた新たな経営の標準だ。ワールドの本社ビル売却は、その潮流を象徴する出来事といえる。今後も上場企業の間で、「重たい資産を降ろす」決断は広がっていきそうだ。








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