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昨年12月日本撤退の「エディー・バウアー」が早くも日本再上陸の不思議

Aug 23, 2022.三浦彰Tokyo,JP
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葉書や手紙には切手が必要だ。切手を貼らなければ相手先には届かない。30年ほど前、あるブランドのライセンシー企業の社長が「ブランドは切手なんですよ。何かしらブランドという切手を貼らなければ流通できないのですから。『無印良品』だって、『無印良品』というブランドでしょ?」と独自のブランド=切手論を展開していたのを思い出した。確かにブランドは必要なのだろうが、これだけ生産のグローバル化が進むと従来の日本でのライセンス契約というものに疑問符がつくようになった。

例えば、202112月末でエディー・バウアー・ジャパンが解散して、日本から「エディー・バウアー(Eddie Bauer)」は撤退したのだが、それから1年も経たない今月、岐阜のアパレルメーカー水甚(みずじん)が、日本での同ブランドの販売権・ライセンス権を持つ伊藤忠商事とサブライセンス契約を結んで、2023年春夏から直営店、オフィシャルECサイト及び、百貨店、セレクトショップ、スポーツ専門店への卸をスタートするという。カテゴリーは、メンズ、レディス、キッズだという。直営店は初年度で10店、5年後には25店舗を予定し、売上高は30億円を目指すという。出店はSCの専門店モールや駅ビルなどだという。

日本で売れなくなった「エディー・バウアー」がコロナ禍で日本撤退し、8カ月後に岐阜のアパレルメーカーのライセンス生産で日本再上陸発表ということだが、常識的に考えてそのビジネスがうまくいくとはとても思えない。当然のことながら水甚は中国、ミャンマーなどの合弁工場や専属契約した工場で海外生産を行うのだから、言ってみればクオリティなどは従来とそう変わらないはずだ。水甚は現在「ファーストダウン(FIRST DOWN)」(米国ターボ・スポーツウェア社とライセンス契約したアメリカンスポーツブランド)、商標権を取得した「リバティル(LibertyBell)」、2020年に自己破産したレナウンが手がけていた「アーノルドパーマー(Arnold Palmer)」「ヘンリー コットンズ(Henry Cotton’s)」を現在企画・生産している。同社のブランドラインナップからすると今回の「エディー・バウアー」はノドから手が出るほど欲しい一格上のブランドなのだろう。「日本の市場をよく知っている我が社なら、絶対うまく行く」と水甚経営陣は判断したのだろうが、このスポーツブランドゾーンは消費者の選別が厳しいゾーンである。スポーツブランドとしてはスペックが今ひとつ、カジュアルブランドとしては「ユニクロ(UNIQLO)」を筆頭にした日本ブランドのコストパフォーマンスに太刀打ちできず、日本撤退した「エディー・バウアー」が水甚によって日本で生まれ変われるものなのか。

冒頭に紹介したような時代遅れのブランド=切手論程度の認識で考えていたら足元をすくわれてしまうのは間違いない。どんな結末になるのか大いに注目したい。

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