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光文社新社長は広告代理店社長という仰天人事の真相は?

Sep 1, 2023.三浦彰Tokyo, JP
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講談社

光文社の新社長に、巴一寿(ともえかずひさ、59歳)氏が就任したと8月30日に発表された。巴氏は、講談社の子会社である広告代理店の第一通信社の社長だった人物だ(既報)。

光文社が講談社のほぼ100%子会社なのだから別に不思議でもなんでもない人事のようにも見える。しかし、光文社社内でこの人事を歓迎する声はほとんどないのではないか。

講談社のほぼ100%子会社とはいえ、独自路線で「雑誌文化」を支えてきたのが光文社だ。付け加えるならばもう一社、マガジンハウスを挙げることができる。では「雑誌文化」とは何か?要するに読者が面白がる情報、あるいは面白がらなくともこれだけは読者に伝えておかなければならない情報を手掛ける発信のことだ。現在の雑誌の多くはそうではなく、広告がどれだけ入って利益がどれだけ出るかを第一義にしている。欲望喚起装置になり下がっているのだ。こうした雑誌の利益主義をもうとっくに読者は見抜いているから、「ただの情報」を求めてWebメディアに移っていく。それでも「雑誌文化」を守ろうとする人々がまだ光文社やマガジンハウスにはいるのではないかと期待している人はいる。

しかし、今回講談社傘下の広告代理店社長を講談社ほぼ100%子会社の光文社社長に据えるという仰天人事は何を意味するのだろうか。業績が思わしくない光文社の立て直しであることは間違いないだろう。長年広告畑を歩んできた広告代理店社長であり、営業強化=広告増大が大目標であろう。今まではほぼ100%子会社とは言え独立独歩だった光文社も講談社主導で立て直しが始まったようだ。そうした中で、光文社が目指して来た「雑誌文化」が生き残れるのかどうか?「私どものブランド名が登場する原稿はその文脈や原稿の狙いを周知したいので全て私どもにお送り下さい」というブランドPRの要望に応え、真っ赤になった返信をそのまま掲載しない限り、そのブランド広告の獲得は難しいという現在、果たしてどうなるのだろう。

そう言えば、マガジンハウスでも2018年12月に営業畑を歩んでいた片桐隆雄副社長が社長に就任している。

しかし今回の光文社での巴氏の就任は、マガジンハウスとは異なり、ほとんど人事交流がなかったにもかかわらず、親会社主導のグループ間人事であり、社員の士気が気になる。

大胆な見方としては、今後雑誌は光文社に集約し、親会社の講談社は、漫画、デジタルビジネス、権利ビジネス、不動産ビジネスに特化していくのではないかという意見もある。

古い話になるが、講談社から光文社に移っていた神吉晴夫社長の経営手法(今でいう成果主義や抜擢人事)に労働組合が反旗を翻し、世にいう「光文社争議」と呼ばれる労働争議が1970年から実に7年間続いたという歴史が光文社にはある。この二の舞はよもやないと思うが、巴新社長には光文社に残っている「雑誌文化」を尊重しながら、儲かる出版社を目指していただきたいものである。

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