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『MODERN LIVING』が事業拡大 「MLスタイリング」をローンチした下田結花発行人と高坂敦信編集長が考える今後の戦略とは?

Jul 6, 2022.セブツー編集部Tokyo, JP
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左から高坂敦信編集長と下田結花発行人(撮影:藤田由香)

創刊から71年目を迎えたインテリアと建築の専門誌『MODERN LIVING(モダンリビング)』。戦後間もない1951年に創刊され、「住まいは幸せな暮らしを支える器」という考えのもと、住宅建築のほか、インテリアや家具を軸に暮らし方やライフスタイルを提案してきた。家を建てる、あるいはリノベーションを考えたり家具や小物を選ぶ時の教本でもあり、まさに「モダン」な暮らしを発信してきた。その『MODERN LIVING』が、観葉植物のレンタルサービスや会員制サロンを展開し、事業の幅を拡げている。2022年5月には個人宅のインテリアコーディネートサービス「ML スタイリング(ML STYLING)」を正式にローンチした。70年以上にわたって培ってきた知識やノウハウをもって編集部員らがインテリアを提案していく。その陣頭指揮を執るのが下田結花発行人と高坂敦信編集長だ。「自分が納得して選んだインテリアでスタイリングされた空間に身を置くことは、とても心地よいことだと知っていただきたい」と語る高坂敦信氏。住宅建築や日本人のライフスタイルの発展に寄与してきた『MODERN LIVING』の事業戦略について、下田発行人と高坂編集長に話を聞いた。

---雑誌の発行を主軸にさまざまな事業を展開していますが、概要はどのようなものでしょうか。
高坂敦信(以下、高坂):まず個人住宅向けに植物がレンタルできるサブスクリプション「ラブグリーン」を事業として始めたのが約12年前です。そして、今年5月に主に個人住宅のインテリアをコーディネートする「ML スタイリング」のウェブサイトをローンチし、事業の拡大を目指すことにしました。これまで誌面で個人住宅を紹介する際、家具や植物を持ち込み、自分たちでスタイリングを行って撮影することが多かったのですが、それがとても好評だったからです。『MODERN LIVING』はコロナ禍でも部数を落とすことはなく、インテリアに関連したビジネスに対してもニーズがあることはわかっていました。『MODERN LIVING』のようなラグジュアリーな世界観で自宅のインテリアを表現してもらえないかという相談や依頼は何年も前から頂いていましたので。そうしたニーズをすくい取り、「ラブグリーン」や「ML スタイリング」を事業化したことで、広告・販売収入に加えて新しい収益の柱に成長していく手応えを感じています。

下田結花(以下、下田):コロナ禍の影響は大きかったと思います。家にいる時間が長くなり、多くの時間を過ごす部屋の家具に目を向ける人が増えました。人々の意識のなかで衣食住のなかの「住」の優先順位が上がっているのではないでしょうか。5年ほど前から高坂のもとにはスタイリングの依頼があり、これまでは大きな予算の発注が主でした。しかし、コロナ禍を経て「住」への関心が高まり、もっと小さい範囲でインテリアのアドバイスが欲しいと考えている人たちはたくさんいるはずです。「MLスタイリング」では家具の最低購入金額を300万と予算規模を抑えて設定しています。規模が大きな依頼は高坂が担当しますが、それ以外のお客さまに対しては私たちがディレクターとしてMLクオリティを担保しながら、インテリアコーディネーターがスタイリングを行います。現在「MLスタイリング」の認定コーディネーターは、4年前から編集部が主宰しているサロン「MLクラブ」の会員から10名がメンバーとして参加していますが、今後増やしていく予定です。

---ハースト婦人画報社が発行する雑誌との連携は考えていますか。
下田:『リシェス』や『婦人画報』などインテリアに限らずラグジュアリーなものを提案するという点で共通している自社メディアとの連携は、今後強化していきます。これまでは『MODERN LIVING』が「MLスタイリング」の入口でしたので、依頼者は読者が多く、誌面に載せているスタイリングをそのまま好まれる方がほとんどでした。ただ、これまでとは違う入口ができたら、お客さまの依頼の内容もモダンリビングの世界観だけではなくより幅広いミックススタイリングへと多様化していくでしょう。「MLスタイリング」はそういった要望にも応えられます。高坂を中心に編集スタッフがスタイリングと撮影を繰り返していくなかで、ハイレベルなノウハウの蓄積があるからです。恐らくこの業界で私たち以上にラグジュアリーで多様なスタイリングが提案できるスタッフはいないと思います。

---「ML スタイリング」はどういったところが強みでしょうか。
高坂:もの選びの明確な基準をインテリアに詳しくない人に対しても納得のいくかたちで伝えられることです。多くの人は家具購入の機会が少なく、ファッションのようにコーディネートのトライ&エラーができません。何を選んでよいのか、家具購入時の信頼できる保証のようなものが欲しいと考えている方は多いのではないでしょうか。『MODERN LIVING』は、その受け皿になるべきだと考えています。インテリアは、物単体ではなく、物と物が隣り合った時にまったく異なって見えてくるものです。どんなに素晴らしい建築であってもインテリアがしっかりスタイリングされていなければ美しくなりません。そういったコーディネート力やアイデアの提案は、雑誌作りにおいて長年培ってきたものですから他にはない強みであり、その蓄積とブランド力があるから、このスタイリングサービスが成り立っていると認識しています。

---ここ数年の生活様式の変化をどのように捉えていますか。
高坂:暮らし方、暮らす場所、時間の使い方、そのすべてを自分で選べるようになり、本当の意味で自由度が増したのではないでしょうか。そのような生活様式の変化に対して、「MLスタイリング」が多様性を持って暮らしのあり方を提案できるかが大事です。表層的なデザインや色の組み合わせのテクニックではなく、ショールームのような画一的なスタイリングでもない、自分の価値観をインテリアで表現したいと思う人が確実に多くなったと感じています。

下田:仕事をする場所、住む場所を自分で選ぶことができる、これがこの2年間の大きな変化だったと思います。2拠点あるいは多拠点生活をしている人は本当に増えました。私自身も東京と北海道の2つの拠点を移動する暮らしをしていますが、そうなると掃除やメンテナンスのことを考えて暮らしをシンプルにしていく必要があります。また、私の場合は東京から大阪に行くより東京から北海道に行く方が時間的に早いのです。移動距離より時間的距離が大事になりました。シンプルな暮らしと時間的距離は今後ますます重要なキーワードになっていくと思います。

---「MLスタイリング」が大切にしていることは何でしょうか。
高坂:お客さまと伴走してその人らしさを引き出して行くことです。そのために、『MODERN LIVING』としての提案はしますが、最終的には必ずお客さまに選んでいただくことにしています。私たち編集者は誌面に載せるものには常に理由をつけてきちんと説明します。同じようにスタイリングもすべての選択肢に理由と結果があるので、それをお客さまにきちんと説明して納得していただきます。納得して選んでいただくことを繰り返していくことで自然とその人らしい空間になっていきます。そうして出来上がった空間に身を置くというのはとても心地よいことだと知っていただきたいと思います。

下田:センスという言葉で片付けず、言語化することを大切にしています。なぜこれがいいのか、なぜこれと合わせるのがいいのか、そこをしっかり言語化して理解いただく。『MODERN LIVING』は自分らしい住まいにしたいと思っている方たちのお手伝いをするというスタンスです。お客さまと一緒になって、どうしたらその方にとっての理想の空間を作ることができるのかを考えます。きちんと納得して選んでいただくことを繰り返せば、最終的には破綻のない美しいものが完成します。『MODERN LIVING』が伝えていきたいのは、心地よい空間が「人生を豊かにする」ということなのです。

■「MLスタイリング」概要
『MODERNLIVING』のスタッフと『MODERNLIVING』が認定する一流のインテリアコーディネーターがチームを組み、インテリアスタイリングを提案するサービス。家具の最低購入金額は300万円、スタイリングフィー(手数料)は購入アイテム総額の10〜15%が目安となる。相談や依頼は専用ウェブサイト「ML スタイリング」から。
mlstyling.modernliving.jp

LOVE GREEN「SEU house」
設計/森山善之+細田 潤 建築設計事務所バケラッタ 撮影/小林久井  
ソファ背面にシンボルツリーを配して、窓際やキッチン、棚まで多様なグリーンを点在させたグリーンコーディネート。植物の高低差をつけることでLDK全体のバランスをとっている。プランターはナチュラルトーンの家具や壁材に合わせてブラウンやグレーを中心に。都心でありながら自然の心地よさに包まれる日常をグリーンの力で実現している。

「N邸」
設計/牛島昌弥+堂薗健寿 BAS建築設計事務所  撮影/下村康典  
LDKの入り口から見た全景。プール付きの庭とひと続きになった縦長のリビングは、L字のソファの背後にパーソナルチェアでコージーコーナーをつくっている。空間の中央にあるキッチンはインテリアのキーアイテムになるようにインパクトのある木目の面材に。奥のダイニングはアイキャッチとしてアーティスティックなシャンデリアを配している。

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