・売上高:1303億9700万円(前期比+4.9%)
・営業利益:43億15000万円(前年−9億4800万円)
・経常利益:46億9800万円(前年−7億5900万円)
・親会社株主に帰属する四半期純利益:27億2300万円(前年比−66.3%)
コロナ禍の地獄を抜け出して黒字転換しているが、2023年2月期通期決算についても上方修正を同日発表している。修正前の数字は第2四半期発表時のものだ。
・売上高:1738億円→1750億円(前年比+3.9%)
・営業利益:41億円→50億円(前年−10億7900万円)
・経常利益:43億円→52億円(前年比+925.1%)
・親会社株主に帰属する四半期純利益:22億円→26億円(同−69.7%)
この発表があった1月12日(木)の終値は314円。翌日(金)の終値は307円、翌週16日(月)の終値は303円まで売られているから、今回の業績上方修正を投資家は全く評価しておらず、むしろ期待ハズレの失望売りが出ている。
考えてみれば、リーマン・ショック(2008年9月15日)前の2007年2月期が同社の最高決算だったが、その売上高3186億9000万円、営業利益は254億3100万円、経常利益は274億700万円。それからみると売上高は6ガケ、利益は5分の1という水準である。今後その水準に戻ることは相当に難しいと言わざるを得ない。売上高1738億円の企業にとって営業利益50億円はその3%の程度の水準で、「在庫の出し入れを上手くすれば捻出できるレベルの数字」という陰口を叩かれても反論できないのではないか。厳しく言えば、コロナ禍を抜け出し黒字転換したことを評価すべきというのでは情ない。とっくに一昨年や昨年の決算で黒字化しているファッション&アパレル企業はあるし、株価が示す通り、実際投資家は評価していない。
しかし、最高決算を叩き出して業界のナンバーワンに君臨していた2006年当時の2000円の株価からすると現在の株価は300円そこそこでときどき200円台に潜る株価も情けない。
アパレルメーカーにとって重要なことは、次代に向けた経営体制を整えることと同時に、次代に向けての新ブランドの芽を育てることである。最近の同社では、成功した新ブランドと言えば、せいぜいオーダースーツの「カシヤマ ザ スマート テーラー(KASHIYAMA the Smart Tailor)」がオーダー市場で評価されているぐらいではないだろうか。それでも全国で60店舗体制を敷いているぐらいだ。オンワードHDの中核企業オンワード樫山は2022年2月決算では、EC比率は30%、販売チャネルは百貨店が総売上高の37.5%、ショッピングセンターなどが32.5%となっている。一応百貨店卸アパレルからの脱却のメドは立っていると言えるだろう。SPAは小売業態で我々の競合ではないというならば、ファーストリテイリングや良品計画、しまむらなどは敵ではなく、アダストリア(2022年2月期売上高2015億円、営業利益65億円、経常利益81億円)、パルグループホールディングス(2022年2月期売上高1342億円、営業利益75億円、経常利益76億円)あたりの多ブランド型アパレルがライバル企業ということになるのだろうか。もう40年もオンワード・ウォッチャーとして同社を見続けた筆者としては、「オンワード、おまえはもう終わっている!!」なだと言われないように、ビックリするような新ブランドを連発して、この東西の2社と互角以上の勝負をしてもらいたいものだが。