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アメリカが中国発「シーイン」を規制か?明るみにでる安さの実体

May 11, 2023.平野智香Tokyo,JP
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撮影:セブツー

アメリカの米中経済安全保障調査委員会(USCC)は4月14日、中国の通販企業に関するレポートを発表した。その中で「シーイン(SHEIN)」が新疆ウイグル地域での強制労働や知的財産権の侵害などに懸念があるとしている。

2008年に設立された「シーイン」は、2022年の売上高が227億ドル(約3兆600億円)とファストファッション業界で快進撃を続けている。「シーイン」のアプリは、2022年5月にティックトック(TikTok)、インスタグラム(Instagram)、Twitter(ツイッター)を追い抜き、一時的にアメリカでもっともダウンロードされ、その数は2,700万ダウンロードを超えており、2位の「ナイキ(NIKE)」の1,250万ダウンロードの2倍以上を記録している。

 ユーザーの検索履歴の解析や高速サプライチェーンにより、米国や日本など多くの国で地位を確立している。USCCによると、「シーイン」は2022年11月に「H&M(エイチ&エム)」や「ザラ(ZARA)」など競合企業を抑え米国内のファストファッション全体売上の50%を占めるに至った。日本でもその安さから若者を中心に人気を博し、2022年には日本各地でポップアップイベントも行われた。

しかし、労働環境などの問題が度々話題になり、同じく中国発のティックトックで購入品のタグに「HELP」の文字があったという投稿がされるなど、消費者も段々と「シーイン」の安さの理由に気づき始めているようだ。

USCCは、今回のレポートで「シーイン」に関する問題点を主に労働環境、サステナブル、著作権問題の3点を挙げている。

労働環境については、新疆ウイグル自治区における強制労働問題が挙げられた。ウイグルだけでなく他地域での搾取的な労働慣行も問題視されており、スイスのNGO団体パブリック・アイの2021年の調査によると、「シーイン」傘下の6つの工場で労働者が週75時間程度の長時間労働に置かれ、残業代が支払われていないと報告されている。「シーイン」の低価格はこうした労働者の犠牲があって成り立っているようだ。

サステナブルに関しては、「シーイン」製品がリサイクル素材ではなく新しいプラスチックを使用しており、繊維廃棄物が増加していることを指摘した。さらに「シーイン」の衣料品から、鉛やフタル酸エステルなど健康に悪影響をもたらす化学物質が一般的な量より多く検出されていることが分かっている。カナダ保健省が「シーイン」の子供用ジャケットを調査したところ、子供にとって安全とされる鉛の20倍の量が検出された。

著作権問題に関しては、アメリカの知的財産法に違反していると指摘された。2021年6月には「ドクターマーチン(Dr.Martens)」の親会社であるエアウエア インターナショナルが同社のデザインをコピーしたとの疑いで「シーイン」を提訴している。大小問わず多くのデザイナーが同様の訴えをしているが、法的処置を取るためのリソースが少ない場合もあり完全な対処ができていないのが現状だ。

以上に挙げられた問題点の他にも個人情報の管理や関税についてUSCCは指摘をしている。

「シーイン」が米国で計画する新規株式公開をめぐり、超党派の米国議員団は米証券取引委員会に「シーイン」が新疆ウイグル自治区での強制労働をしていないと立証するまで新規株式公開を認めないという旨の書簡を送付した。これにより米国における「シーイン」規制強化となるか、また米中対立の新たな火種となりうるか、注目が集まっている。

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