・売上高:1兆5720億3000万円(前年比+6.3%)
・税引前利益:−3兆2924億5500万円(前年+1兆2924億7800万円)
・四半期利益:−3兆963億2100万円(前年+9324億8900万円)
・親会社の所有者に帰属する四半期利益:−3兆1627億円(前年+7615億900万円)
なぜ売上高が1兆5720億3000万円の企業が3兆2924億5500万円の赤字を計上できるのか?それはSBGの主要事業が投資ファンドだからだ。投資している企業(全世界の上場企業&非上場企業)の株価や為替に業績が大きく左右されるビジネスが主力事業になっているからだ。この4月1日〜6月30日間の世界的株安や円安が大きな打撃になって3兆円を超える赤字になった。しかし貸借対照表への影響を含めた4-6月の企業価値の変化を示す包括利益では赤字は−1兆431億5100万円の計上になっている。さらに7–9月にSBGはその総株式の23.7%を保有するアリババ(中国最大のEC企業)の株式を売却して、売却益と売却によって関連会社から外れることによる時価会計適用による再評価額計上で約4.6兆円の税前利益を計上する予定だ。これにより、4−6月の3兆円を超える赤字はリカバリーできると見ているのだ。
こういう投資会社の決算は、株価、為替の変動に加えて会計テクニックがモノを言う。SBGの2016年3月期以来の当期純利益(単位億円)の推移を追うと:4741億円→1兆4263億円→1兆389億円→1兆4111億円→−9615億円→4兆9879億円(アップル社に次いで世界第2位の純利益)→−1兆80億円(2022年3月期)となっている。今回の四半期決算についてSBGの孫正義会長兼社長は「有頂天になった自分が恥ずかしく、反省している」と強気過ぎた投資姿勢を殊勝に振り返っているが、「新たな投資は徹底的に厳選している」とのことで、まだまだ余裕がありそうではある。
一方、ちょっと余裕がなく追い込まれている感じなのが、楽天グループだ。同社のここ3年の中間決算の営業利益を振り返ると:
−207億円(2020年6月)→−1008億円(2021年6月)→−1970億円(2022年6月)と赤字幅は大きく拡大し続けている。言うまでもなく楽天グループが第4のキャリアとして携帯事業に参入した2020年から苦戦が続いている。通信行政に詳しい菅義偉官房長官(当時)の「携帯料金は今の4割値下げできる余地がある」発言(2018年8月)に乗せられたと言われる楽天グループの携帯参入が今や8935億円の年商の同社にとって1975億円の営業赤字の元凶になっているのだ。
同社には、国内EC(楽天市場、楽天トラベル)、グローバル(Rakuten Rewards)、フィンテック(カード、金融証券)などの柱があるが、携帯事業を除いたこれらの事業は順調な成長を続けている。いかに携帯事業が負担になっているかがわかる。
楽天グループの明るい話題としては、楽天銀行と楽天証券ホールディングスの近々の上場があげられる。2社の上場益はかなりの額になることが予想されるが、携帯事業がいつ黒字化するのかについては、「2021年度の315億円をピークに設備投資額は2022年以降減少に転じる」ため、その赤字は2022年第1四半期の1350億4600万円の赤字をピークに2022年第2四半期は1242億8100万円に減少し順次減っていくとしているが、当初予定の2023年度黒字化はとても無理で、黒字化がいつかは明言を避けている。
また「月額0円から」のプラン廃止で6月末現在で546万契約と4月末に比べて23万件の減少となったことも明らかにされたが、「解約ユーザーの8割はゼロ円ユーザー」と三木谷浩史会長兼社長は分析しているが、短期的には収益の改善につながるが、長期的には「楽天離れ」にもつながりかねない。いずれにしてもモバイル参入で3期連続赤字に陥った楽天グループに、黒字化のメドは立たず、創業以来の危機に立たされていることは間違いない。